ジャンプ。それは国内で大ヒット漫画を大量に輩出している大登竜門。
そしてそれは同時に、アンケートによる掲載順(どこまでシビアに影響を受けているかは不明だが)によって人気順が読者にもわかってしまう、残酷なレースでもある。
ジャンプを毎週購読していると、以前だったら単行本をわざわざ買わないような漫画、もっと広くいえばそこまで趣味じゃなさそうなジャンルの漫画まで読むことができる。
こんなに嬉しいことってないですよね。
もしかしたら無茶苦茶面白い漫画に出会えるかもしれないし、本屋で手に取らないどころか読むのを断念してしまいそうなくらいハマらない漫画を通して読むこともできる。
面白い漫画を読むのは当然面白いけれど、自分がつまらないなと思う作品の何がつまらないのかを考えるのも、それはそれで面白かったりする。
打ち切り漫画を振り返るときは「どんなカス漫画だったっけ」ではなく、「何が”今のこのジャンプ”に足りなかったのだろうか」という角度で見てみると(少なくとも私にとっては)とても有意義になると思う。
そんなわけで2023年に打ち切られてしまった作品たちを思い出していきたい。
『大東京鬼嫁伝』
『ギンカとリューナ』
『イチゴーキ!操縦中』
『人造人間100』
『テンマクキネマ』
『ドリトライ』
『一ノ瀬家の大罪』
『アイスヘッドギル』
『暗号学園のいろは』
『アスミカケル』
どの作品も(どんな形であれ)印象に残っているものばかりなのに、全部終わってしまった。
悲しいね。
リアルタイムで各号を追っているときは割と自由に感想を書いているけれど、打ち切り復習回では追悼の念と敬意をもって各作品に触れていきたいと思う。
『大東京鬼嫁伝』 全29話

『ルリドラゴン』が長期間休載していたなか、ツノキャラ枠をかっさらっていく超新星!に当時は思えた作品。
可愛くて丁寧な絵柄でラブコメ(たまにちょっとバトル)を展開していった本作は、ほぼ毎週と言っていいくらいキャラが増えまくってきたことで話題になった。
”キャラガチャ”なんて言われたりしていたし、実際読んでいたときの感覚はガチャそのものだった。
いろいろな妖怪の女の子キャラが無尽蔵に増えていき、話はどんどん賑やかに!けれどもその分渋滞しやすくなり、物語自体はあまりうごかないというジレンマがあったのかもしれない。
私はみんなで鍋をつつく回とか結構好きでした。
中盤で、姉に擬態した妖怪が登場し、この可愛い絵柄にも関わらず寄生獣さながら顔面がぱっくり開くなんて描写をしてきた時は度肝を抜かれた。
この可愛い絵柄で妖怪ホラーはガッツリ怖く書いて、その一方でドタバタラブコメをやるなんて漫画になったら読むのが楽しくなってくるぞ!とおもってたいそうワクワクしていたのだけれど、残念ながらあまりそういう展開にはならなかった。
絵柄は好きなのでまたどこかで次回作を読めることを楽しみにしています。
『ギンカとリューナ』 全29話

初手で物語の指針を示し損ねたことで、予想以上に軸のない冒険で幕を閉じてしまった本作。
ちょこちょこ言及された魔法の設定が面白かったことが何より記憶に残っている。
呪文は祈りや歌声から派生したものだという話や、それを染み込ませたものが魔法の杖であるという設定であったり、そういったところはすごくワクワクさせられた。
けれども結局、魔法の杖による魔法発動と、呪文詠唱による魔法発動との使い勝手や効果の違いなどは語られないままだった。
魔法ファンタジーって無茶苦茶王道、だからこそこの作品での魔法解釈に興味があったので、そこが中途半端な掘り下げだったのが私は寂しかった。
ギンカが無茶苦茶強いのだけれど、それを制限する要素も特に無く、主人公二人が無双して解決するバトルが多かった印象もある。
しかし、終盤、リューナがもつ「記憶を代償に力を手にする魔法」にはテンションが上った。
まさかこの戦いで漫画が終わるとは思っていなかったので、これからも奥の手として記憶をぶっ飛ばす魔法を定期的に使っていくのか?!と震え上がった。冒険を続けて、その都度仲間との関係性が築き上げられていくが、強敵と合うたびにその記憶をぶっ飛ばして、自然と主人公は孤独な戦いを強いられることになる…なんてことになったら無茶苦茶かっこいいじゃないか!と勝手に想像してはしゃいでいた。
そんなことには一切ならず、あっさりバトルは集結。
「いつか思い出してくれるのを信じよう…」というビターエンドで幕引きだった。
なんだかググッと面白くなるきっかけは山程あった作品な気がするので、どうにもこの作品を忘れられない。
『イチゴーキ!操縦中』 全19話

びっくりするくらいハマれなかった作品。
テンションで振り切っていくスタイルのギャグ漫画は、キャラクターへの愛着を持ってして持続性を手にすると思うのだけれど、この作品はどのキャラにも愛着を持てず、なによりも肝心のギャグがあまり口に合わないということで、散々な印象だった。
主人公がヒロインに一方的に迷惑をかけられたり、振り回されたりするだけで、主人公側はなすすべなし。なんだか面白いというよりも、だんだん主人公が哀れになってきてしまった。
ギャグ漫画でそんなこと思うのは野暮だよなぁと思いながらも、結局素直にウケることが出来ないままだったのがなんとも悔しい。
最終盤、急に突入した卒業式の回は笑ったのをよく覚えている。
おそらく打ち切りが決まったがゆえに作中の時間がガッツリスキップしたのだが、それをイジって記憶にない思い出がダイジェストで流れまくるというギャグは痛快だった。
好きな作品ではなかったけれど、打ち切り間際の輝きはすごかったと思う。
ただ、別にだからといってもっと続いてほしいとは思わなかった。それに尽きる漫画かもしれない。
『人造人間100』 全36話

この作品好きだったなぁ…
中世ダークファンタジーという少しジャンプでは久しい設定で始まった本作。人造人間を駆逐し、最後には自身の身体を受け渡すという契約で人造人間100号と協力関係にある主人公。最後には相棒に殺されることが決まっているという重めの設定に対して、物語上では自己犠牲についての是非を問うエピソードで主人公を揺さぶってきたりする。
それだけでも十分面白かったのだが、何より魅力的だったのは100号のキャラクターだ。
人造人間はより良い肉体を求めて人間を襲い続ける。どこまでも利己的で情のかけらもない化け物として描かれる。それは100号も例外ではなく、利害の一致で現在味方でいるだけで、別に主人公への愛情や絆などはまったく育まれないのだ。
この異種間交友に絆が生まれることをどうしても期待してしまう読者。けれども全くその様子が見えない100号の不気味さに、常に緊張感があった。
この一筋縄ではいかない関係性を最終話まで突き通したのは、とてもかっこいい作品だと思う。
読んでいてすべてが魅力的だったかと言われると、正直頷けない作品ではあった。
地味なバトル。能力や技も見せ場があまりかっこよくない。サイドのキャラが役割的であまり愛着が湧きづらいなど…
けれども根本的な構成の面白さが光る作品だったことは変わらないので、私ははやくこの作家の次回作が読みたい。
『テンマクキネマ』 全21話

脚本家の亡霊が書き上げた超傑作を、高校生の主人公たちが映画化する!というキャッチーな導入で始まった本作。
けれどもその肝心の”超傑作の脚本”が具体的にどんな内容なのかは最後まで語られることはなく、あくまで撮影パートで断片的に触れられるだけに終わってしまった。登場人物たちはのきなみその脚本に涙して映画製作に協力するのだが、どの脚本についての情報をもらえない読者は、いまいち説得力がないまま置いてきぼりになっていた気がする。
主人公は監督という立場もあり、脚本時点で産みの苦しみのようなものは消化されているため、主人公が奮闘するすがたに合わせてこっちもアツくなるみたいなこともなかった。
絵は無茶苦茶上手いし、各シーンの見せ方とかはやっぱり漫画の上手さを感じる楽しい漫画だったのだけれど、シナリオ面でどうしても大味な印象を拭えなかった作品ではないだろうか。
『ドリトライ』 全19話

2024年の大ミーム。
ギャグなのかマジなのかよくわからないテンションや絵柄で大いに読者を混乱させてくれたのが懐かしい。リアルタイムで困惑されているのを味わえたのはいい思い出かもしれない。
拳闘でファイトマネーを稼いで病気の妹を助ける!というシンプルな大筋だったが、それぞれの試合もシンプルすぎた。
基本どの試合も根性!心の強さで打ち勝つ!という展開しか引き出しに無く、ド正面からそれを書いていくアツさが最初はあったものの、まさかラスボス戦までずっとそれ一本で行くとは思わなかった。
良くも悪くもあまり主人公の成長を(技としても精神面でも)感じることが出来ず、敵側の葛藤のほうがまだ共感の余地があるというアンバランスな構図になってしまっていたように感じる。
またバトル(試合)において、敵はバッキバキの右腕であったり、ドーピングの鬼であったりと、キャラも立っているし戦い方がわかりやすいところがあったのだけれど、主人公はあくまで根性一本。修行して手に入れるのも要はただのカウンターだったりして、あからさまに地味だった。
アツい漫画なはずなのに、ベストバウトは一切浮かばない。これはこれで器用なことをしている作品だったのかもしれない。
『一ノ瀬家の大罪』 全48話

おそらくここ最近で最も期待され、最も見放されていった作品といっても過言ではないのではないだろうか。
『タコピーの原罪』は間違いなく名作だと私は思っているし、画力、演出、シナリオ展開、ディティールなど、魅力の幅が広い作家だということを『タコピー』でこれでもかと思い知らされていたので、本当に新作が楽しみだった。
なのにどうしてこんなふわっと散る結果に…
理由は単純。どんでん返しをし続けた結果、全然登場人物たちの関係性が積み上がらなかったからだろう。
記憶喪失によるリセット、夢オチによるリセットを繰り返しすぎたあまり、読んでいて感動するようなやり取りがあっても「どうせこの展開も全部ちゃぶ台返しされるんだろうな」と冷めてしまう状態になってしまった。
各シーンの見せ方は『タコピー』から健在にも関わらず、人間関係の描き方やその周りのディティールの上手さ、それらの旨味をすべて舞台装置で台無しにし続けるという変な漫画だった。
物語が進展しない。関係性が積み上がらない。前提情報がなかったことになる。これを繰り返してもなお面白いシナリオがあったらそれはとんでもない発明だと思う。
なのでこの作品は、作者の漫画能力は極めて高いにも関わらず、そもそもの構造欠陥という欠点一本で崩壊したという稀有な漫画と言えるだろう。
『アイスヘッドギル』 全20話

王道アドベンチャーであることが魅力でありながら、王道アドベンチャーでしかないことによって終わってしまった作品。
こういった事故はジャンプでは極めて多い気がする。
王道でありつつも、舞台や登場武器に少しクセがある。そのクセが物語に大きく影響を与える前に終わってしまった。
なんとなく「どっかでおもしろくなってくるんだろうな~」と読んでいたら気づけば終わっているシリーズの典型かもしれない。
まとめ
私がジャンプを毎週購読するようにしたのは2022年の後半からなので、ちょうどこの記事に登場した作品はすべて連載開始から連載終了まで見届けることが出来たものばかりだ。
連載当時は始まってから結構経ったけど盛り上がらないな、と思っていた作品も、こうやって振り返ってみるとたったの20話前後だったりしてびっくりする。
この年で一番好きだった作品は『人造人間100』だったので、この中では長く続いたほうだが、やっぱりもっと読みたかったなと惜しくなってしまう。
ジャンプは好きな作品が出てくると、その掲載順に一喜一憂してしまうという心臓に悪い雑誌だけれど、こうやって単行本2,3冊で終わってしまう漫画に出会えるきっかけなんて中々無いので、結果楽しさが勝つ。
また『人造人間100』のようなひねくれつつも丁寧に展開していく作品に出会えたら嬉しいと思う。
江ノ島だいすけ先生の次回作、楽しみにしています。