夏が終わったと思ったらあっという間に冬になってしまった。
気圧の変化で頭が割れそうになりますね。どうにかならないのかこれ。
動く気力が全く練れず気づけばブログの更新すらできないで数か月がたっていた。
すこし元気になってきたのでまた更新していきます。
すこしさかのぼるけれど9月に見た映画やアニメ、読んだ本を振り返っていきます。
10月と11月はあまり映画をみたり本を読んだりすることができなかったので、一つの記事にまとめてしまうと思います。
YouTubeも元気があったら撮ります。自分の記録のためにやっているのでのんびりペースですが、こういうのを残しておくのは有意義だなとは思うので、ゆっくりでも途絶えずに更新していきたいと思う。
映画『変身』 監督:クリススワントン

カフカの作品が映画になっていることを知らなかったので思わず視聴。
ピクサーのようなタッチで虫になったグレゴールが描かれるので、想像よりずっと愛嬌があって、なんだか余計に可哀想。 自分がイメージしていたものとは違ったけれど、きっとカフカの寓話性みたいなものをコミカルに描こうとしているのかなとも思える。
名著紹介ドラマといった具合のさっくりしたタッチ。
映画『断食芸人』 監督:足立正行

カフカの『断食芸人』を現代で起きる個人のコンテンツ化社会に持ってきたのはわかるんだけれど、肝心の作品として成立しているのかは怪しい映像。
原作と本作の繋げ方が、シナリオにおいても時代設定においても人物描写においても中途半端なので、全てが破綻していた。意味を持たせようとしているところだけが、やけに説明的で、それ以外はやけに空洞。意図的だったとしても度を超えた退屈さと陳腐すぎるエログロだった。被災地との結び付きを最後まで理解できなかった。
アニメ『田舎医者』 監督:山村浩二

短編アニメーションながらカフカのイメージを見事にアニメーションとして書き起こしていて満足度が高かった。
忠実に作り出された不条理。狂ったパースが狂った世界を真っ直ぐ映していた。
狂言師を起用しているというのも後に知って納得。聞かせてくるモノローグだった。
映画『審判』 監督:ジョンウィリアムズ

カフカの『審判』を原作に、現代を舞台にした映画。
登場人物の演出が無意味に漫画的な上、美術も衣装もチープで、映画全体が陳腐なものになっていた。
映画『ねじ式』 監督:石井輝男

つげ義春の表題作を中心に他複数作を絡ませて作られているので、元ネタ探し的な楽しさがあった。
つげ義春の絵のカットを映像で再現しているものの、静止画的なイメージでの再現が多く、あまり映像になったことへの興奮はなかった。 ただこういった作品ではやっぱり浅野忠信の演技がとにかく光る。
映画『NO SMOKING』 監督:佐渡岳利

細野晴臣のミュージシャンとしての歴史を辿るドキュメンタリー。
今となってはYMOの生き残りとなった彼がいかに国内音楽への貢献者であるのかがありありと見せつけられる。けれど彼自身はずっと謙虚でユーモラスにのらりくらりとしている。
「タバコをくゆらすように、音楽もくゆらせている」と語っていたように、煙のように掴みどころのない人間性や溢れる人望が魅力的で微笑んでしまう。
ライブ映像や今では貴重なオフィシャル映像なども多数使用されていて満足度の高いドキュメンタリーだった。正直彼が生きている間にこの映画が撮影されているということ自体も嬉しい。
音楽『RADWIMPS4 ~おかずのごはん~』 RADWIMPS

なんとなく聞かず嫌いをしていたラッドのアルバム一枚だけを一週間聴き込んで、苦手意識の正体はなんだったのか?思春期に通ればハマったのか?などを突き止めていく記事を書きました。
中高生の時に通らないと今からでは好きになれないバンド、なんて言われたりもするバンドだが、中高生の時の感覚を思い起こしてみても、やはり当時でもハマらなかっただろうなという印象に一週間を経て辿り着いてしまった。
けれども、以前のラッドに対する"何となくふわっとした嫌悪感"は解消された。
今はラッドが持つ魅力の種類がどういったものかが掴めたし、そしてそれが単なる良し悪しではなく、どういった方向性で自分の好みと違うのかが理解できた。
そもそもこの企画は決してラッドを貶めることが目的でもないし、悪口を言うためのものでもない。
自分の中で釈然としないまま「なんか嫌い」で置いてしまっていたものを、一度しっかりと凝視してみようというものだ。
どういった道筋でラッドを受け止めていくことができたのかぜひ見てやってください。
映画『スコットピルグリム vs.邪悪な元カレ軍団』 監督:エドガーライト

日本ゲームのBGMやUIのパロディがこれ以上ないくらいに詰め込まれていて楽しいボーイミーツガールもの。
「そうはならんやろ」をぶち抜いて軽快なテンポでコミカルに進んで、爆音でオルタナ・パワーポップが鳴りまくるのが気持ちいい超絶爽快娯楽作。
格闘シーンもゲームバトル風のトンデモ感があってよかったのはもちろん、片柳兄弟とのライブバトルシーンの曲が普通によかった。
映画『映画:フィッシュマンズ』 監督:手嶋悠貴

佐藤伸治のみならず、あのメンバーだからこそ成立させられていたバンド内外のそれぞれ役割について。そして今でこそ伝説のバンドだが、当時ぶつかっていた商業的な葛藤が各関係者へのインタビューから分かる。 当時のライブ映像やデモ音源なども使用され、3時間弱もあっという間。 そしてやはり佐藤伸治という存在の喪失により、戻ってくる彼の大きさ。それぞれがどう受け止め、「フィッシュマンズ」というバンドをどういうものとして振り返っているのかが深く突き刺さってくるドキュメンタリーだった。
映画『THE LONG SEASON REVUE』 監督:川村ケンスケ

フィッシュマンズ佐藤さんへの賑やかな追悼のような、ミュージックビデオのように見れる映画。
死を悼むしんみりしたものではなく、彼が作ってきた音楽は今もなお鳴り続けることを証明し続ける、祝福のようなライブ映像たちだった。
小説『梶井基次郎全集』 作:梶井基次郎

久々に再読。全作品に加え習作も収録しているちくまの全集は宝物。
見窄らしい暗さと卑屈な笑いが有るけれど、太宰のようなナルシズムや寓話性は一切なく、何処か渇いた清涼感が光る。空想に縋りながらも空想に殺される。そんな弱さが梶井基次郎の輝きだと思った。
ポのコピペから引用したのが申し訳なくなるくらい面白い。
やっぱり好きな作家です。
映画『リアリズムの宿』 監督:山下敦弘

ジム・ジャームッシュのような上質な退屈さに、つげ義春らしいユーモアが融合して映画としてとても魅力的に仕上がっていた。原作郡にある“みっともなさ”がしっかりと消化されていてつげ義春好きには嬉しい映像化。
音楽を担当しているくるりも、思っていた以上に渋い仕事をしていて映画音楽としていい具合の存在感で感動。
若き日の尾野真千子が眩しい。
映画『秘密の森の、その向こう』 監督:セリーヌシアマ

冒頭、後部座席からお母さんにお菓子を分けてあげるシーンから心を鷲掴みにされた。
中盤のお父さんの髭剃りのシーンや、終盤のクレープを作るシーンもすごく魅力的。 大きくてぼんやりとした不安や心配の中でも確かにある瞬間瞬間の喜びを綺麗に映し出した、1時間ちょっととは思えない満足感だった。
タイムスリップものではあるけれど、S(少し)F(不思議)的なささやかな奇跡として描かれているのも良かった。
映画『tomboy』 監督:セリーヌシアマ

男の子として友達と恋人を作りたかった主人公のストレスとほんの僅かな喜びを描いたジュブナイル。
淡い青春に親が介入してからの終盤がずっと苦く苦しい。けれど最後に少しの清涼感を残す締めの巧さ。
森の中で青いワンピースを捨て、グレーのタンクトップで帰るシーンは色使いや構図ともにすごく絵画的。そういえば『燃ゆる女の肖像』でも画面の一つ一つが美しい構図だった。
どうやらこの監督の作品だいぶ好きみたいです。
映画『悪夢のエレベーター』 監督:堀部圭亮

演劇的なワンシチュエーション劇かと思ったら後半からはガラッとまた話の軸が変わっていくドタバタ劇。
事故が事故を呼んでいく連鎖で緊張感が高まっていくと思いきや、シリアスなアクシデントをCGで必要以上に演出してきて興醒めした。 コメディとして受け入れていたエンタメ邦画的な安っぽい演技も、シリアスなシナリオ展開になればなるほど悪目立ちしていくので、話は広がっているのに退屈していくという不思議な体験が出来た。
漫画『風の谷のナウシカ』 作:宮崎駿

とにかく話が面白すぎて忘れそうになるけど、無茶苦茶絵が上手くて笑ってしまう。
今を生きる一つの種であり一つの個でもあることを全うしようとするナウシカのその姿は、王に称された通り“破壊と慈悲の混沌”だ。全ての命・存在のあり方に愛を捧げ、個を踏み躙る全には憤る。それらが真っ直ぐな人物として太く描かれているのが本当にカッコよかった。
書籍『存在の彼方へ』 監督:エマニュエルレヴィナス

心象の発露は剥き出しの内臓に等しく、語ることは可傷性そのものだというくだりから一気に引き込まれた。
他に対する感受性(もとい共感)とは”身代わり”として自身を引き剥がし差し出すこと。そして自分が何かを語ることとは、語られる他なる何かを享受しながら、同時に自身も可傷性を抱えている。互いに傷を負う可能性を晒す苦しみこそが自己のみの存在を超えていく術なのかもしれない。
これだけ他なるものとの関わりによる自己言及を展開していた流れの中でコミュニケーションに対して「狂気の沙汰」というところは笑ってしまった。
映画『ジョン・ウィック』 監督:チャドスタエルスキ

車!銃!格闘!アクション要素てんこ盛りの欲張り映画。
ハイテンポでわかり易けれど一直線すぎない展開で飽きさせずに一気に見せてくれた。序盤の懐いている犬が可愛かったので結構ショックを受けてしまったけれど、なんとか耐えました。
チンピラの絡みから案外大ごとになり、結構大変な復讐劇になってしまうという導入から、もはやギャグかと思って見ていたけれど、主人公がひたすら無双するだけじゃなく多勢に無勢で割と苦戦するので緊張感があってよかった。
ハードボイルドジャンクフード。
映画『ジョン・ウィック:チャプター2』 監督:チャドスタエルスキ

殺し屋がゴロゴロやってきて戦闘しまくるので前作より頭空っぽで見られる。しかし闘うキッカケが毎度可哀想なジョン・ウィック。こんな事してたらずっと立ち直れないよ。
ラストシーンの気味の悪さと引きは抜群に良くて、続編も観るか…となった。
映画『ジョン・ウィック:パラベラム』 監督:チャドスタエルスキ

ドンパチも増えて肉弾戦も増えて、しまいには乗馬まで登場して笑ってしまった。 こういったアクション映画のなんちゃってアジアが出るたびにテンションが上がる。偽物でしか摂取できない栄養素ってありますよね。
もう復讐の殺し屋というよりは裏稼業バトルジャンキー映画みたいになってきているが、アクションが良いからその辺はどうでもいっか!と振り切れるのが魅力。
アニメ『スコットピルグリム テイクスオフ』 製作:サイエンスSARU

映画とは違うシナリオ展開ではしゃいでしまった。可愛いデフォルメのキャラデザがそのままに、抜群の作画で動き回るのが最高に楽しい。
ただ元のシナリオを前提としたスピンオフ的な脚本なので、この作品単品だと少し置いてけぼりを喰らうかも知れない。
アニメ『Sunnyboy』 監督:夏目真悟

SFごった煮の漂流教室かと思いきや、1話ごとに全く違う軸で言葉足らずの物語が動いていくので、こういうスタンスだと飲み込むまでに少し時間がかかった。
あえて語らない、というよりも確実に説明した方がいいところも全く説明しないので、要素要素をメタファーとして流していかないとまともに見ていられない作品ではある。けれどそれをしっかりカバーし切る程に絵と音楽が良かった。
一貫して瑞穂(悠木碧)の演技がびっくりするくらいずっと良くて、それがこの意味深さとサブカル色で突っ切ろうとしてしまう本作全体をうまくリードしてなんとか自立させていたと思う。
映画『だましだまされアート界:贋作をめぐる物語』 監督:パリーアヴリッチ

マークロスコやジャクソンポロックなどの抽象絵画の贋作問題という美術界の大きなスキャンダルを追ったドキュメンタリー。
誰がどこまで真実を知って絵画とお金を動かしていたのかは未だハッキリとはわからないままだが、いかにもキナ臭い緊張感が常に張り詰めていた。
アートだからというよりも、きっと全てのプレミア市場に置き換えられることで、物(作品)と”サイン”がもつ相互的な価値関係とシステムについて考え直さなければいけないなと思う。
映画『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』 監督:ウィルシャープ

猫のイラストで有名なルイスウェインの伝記的な作品。
絵柄自体は知っているものの、彼の作品による訴求があってこそ猫がペットとして愛されること(の基盤)になったということは知らなかった。物語としては作家性というよりも、彼の歩んだロマンスと猫への愛着、そして統合失調症を患ってからの錯乱振りを淡々と追っていくシンプルな伝記物という印象。
シナリオや演出というよりも役者の良さで説得力を出してくるタイプの作品だった。 それにしてもカンバーバッチ毎度奇才が割り振られているなと笑ってしまう。そしてどの作品でもその多動っぷりの巧さたるや。
映画『落下の解剖学』 監督:ジョスティーヌトリエ

西川美和監督の『ゆれる』を彷彿とさせる、一つの事件を軸に関係者の心理を裁判が掻き乱していくサスペンス。
ミステリー的要素を期待させるコピーだったが、本筋は夫婦関係の歪みや視覚障害を持った息子が持つ心身を覆う暗闇だった。証言や問答を繰り返すたびに揺れ動く真実や心象、そしてその人物の客観的印象を映像的にもよく映し出していて2時間半という長さを忘れさせられた。
『フレンチアルプスで起きたこと』を見た時も思ったけれども、丁寧に脚本として成立している喧嘩ってなんでこんなに面白いんだろうか。
ただの口喧嘩を魅せられていて退屈だったというレビューも見かけたけれども、こんなに丁寧に作られた上質な喧嘩を見られるなんて僕はうれしくなりました。
まとめ
9月は25作品。
健康的な数になってきた気がする。
この時期に見た作品で特に好きだったのはこちら。
- 映画『スコットピルグリム vs.邪悪な元カレ軍団』 監督:エドガーライト
- 小説『梶井基次郎全集』 作:梶井基次郎
- 映画『秘密の森の、その向こう』 監督:セリーヌシアマ
- 漫画『風の谷のナウシカ』 作:宮崎駿
- 映画『落下の解剖学』 監督:ジョスティーヌトリエ
カフカを原作にした作品を漁ってみたけれどれも、どれもカスのような映画以下の映像ですごく虚しくなった。最近は面白い映画をたくさんみていたので、嫌な予感しかしない映画も勇気をもって見ようとした結果、とんでもなく苦痛な時間を過ごすことになった。自業自得。
ただ、ほんとうにつまらない映画をみると、単純な娯楽作がいかにきちんと作られたものなのかと感動することができるので、ある意味ありがたい存在でもあるのかもしれない。
やはり映画も小説もなにかしらのメディアって自分の好みみたいなものがハッキリしてくると、軽い食感と濃い味のものを見下してしまいそうになるが、大手のジャンクフードも様々なノウハウが生かされた高性能な作品だということを忘れてはいけないなと反省する。
9月に見た中で一番好きなのは『秘密の森の、その向こう』。
各シーンであふれる優しさがとにかく丁寧に丁寧に撮られているのがわかる。
しかもその丁寧さというのも緻密に演出されているというよりも、ごく自然に零れ落ちたシーンかのように見せてくれているのが感動的。
短い映画だったけれども長編映画と同じくらいの満足感をしっかりと得ることができた。
さみしくなった時にまた見返したいと思う。



