気付けばすっかり寒くなってきてワロタ。
10月も終わってすっかり年末まっしぐらですね。
10月も色々と読んだり見たりしていました。
喫茶店でひたすら本を読んだり文章を書いたりしています。結構元気にやってます。
それでは振り返っていくぞ!
小説『火星の人』 作:アンディ・ウィアー
映画『オデッセイ』ですでにストーリーを全て知っていたが、その上でも全然面白く読む事ができた。
火星に取り残された植物学者が、基地の中でなんとか救助まで生存しようと奮闘する物語だが、科学や農業の展開は勿論、何よりその主人公の前向きでユーモアに溢れたメンタリティが読者を惹きつけてくれる。
幾度となくピンチに襲われて、その度に知識とど根性の行動力で即座に解決に向かって行く。それの繰り返しなのと、結末が分かりきっている分終盤の緊張感は薄れたが、それでも痛快に駆け抜けてくれた。


随筆『ナナメの夕暮れ』 著:若林正恭
前作の『人見知り』から時間を経て、社会との摩擦と苦しみへの対処法が少しずつ変化して行く様が見る事ができてなんだか安心させてくれる。
ずっと苦しさは形を変えて寄り添ってくるし、その上で自分自身も擦り減ったり新たな喜びを見つけたりを繰り返して生きて行くしかないのだということを実感させられる。
各エピソードが本当になんでもないぼやきのようでもあるのだが、一冊読み切った時のこの清々しさは一体なんなのだろうか。
解説の朝井リョウの寄稿文もべらぼうに良い。

小説『アルテミス』 著:アンディ・ウィアー
物語が始まった瞬間からシチュエーションが完結している他二作に比べ、順々に展開されていく本作。
スリルという点ではそれらの作品に劣るけれど、相変わらずウィットに富んだ会話や軽快なテンポでバカデカい困難をサクサク乗り越えていく楽しさがあり、ウキウキで読めた。
馴染みのメンバーが集結して作戦を遂行する流れとかは映画や漫画のアツいシーンさながらの盛り上がりだったけれど、このピークに差しあたるまでが少し長い気はしてしまった。その後の『プロジェクトヘイルメアリー』が完璧な仕上がりすぎたせいかもしれない。


随筆『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』 作:若林正恭
キューバ、モンゴル、アイスランドの旅行記。
どれも俯瞰的な目線ではなく、あくまで若林氏の等身大の目線で物語られるのがなんだか安心感があってよかった。
旅行で得られる開放感と共に、付き纏う不安や不信もしっかりと拾い上げる人間味の強さが愛おしかった。
人はどこに居ようがどこに行こうが、コミュニケーションの摩擦で傷付くこともあれば、コミュニケーションによって洗われることもあるのだと強く感じた。

随筆『共感と距離感の練習』 著:小沼理
ゲイの筆者が映画、音楽、美術、デモ、イベントを通しながら思索した社会との摩擦についてのエッセイ。
様々なメディアや場面でクィアについて触れられることは増えたけれど、それら環境の変化はあくまで彼らが能動的に動いた結果でしかなく、社会から寄り添っていっているとはとても思えない。
ただのキャンペーンとして漂白されたLGBTQという記号ではなく、個人個人と直向きに対話する事を私はやめたくないと強く思う。
我々に必要なのは“一方的な理解”ではなく、単純な“他者との対話”なのだと感じる。

評論『日本デジタルゲーム産業史 増補改訂版』 著:小山友介
ゲームの始祖たる遊具からアーケード、そしてハード、DLC、スマホゲームまでを隈なく読み解いていきながらも、同時に“なぜゲームセンターが不良の溜まり場になったのか”や“ゲームの普及方式によって収益の回収方法がいかに変容していったか“など、ゲーム自体の持つ創造性のみに収まらないその周辺の社会を掘り下げていく。
読み応え抜群。

映画『フィフスエレメント』 監督:リュック・ベッソン
SFハードボイルドギャグ漫画。
バキバキに気合いが入りつつもキッチュな衣装と美術がふんだんに使われていて見応えがあった。
90年代らしいパリパリのCGもある意味親和性があった。強引なストーリーテリングや、登場人物同士の関係性をぶっちぎっていくテンポの良さ。そして謎に丁寧な歌姫の歌唱シーン。
つつきたくなるところは山盛りあるけど、そういった細かいことよりも監督のやりたい事をとにかくやりまくった映画といった感じの痛快さがあった。

評論『クリティカルワード ゲームスタディーズ 遊びから文化と社会を考える』 編集:吉田寛,井上明人,松永伸司,マーティン・ロート
ゲームに纏わる各項目(キーワード)事に、複数の著者が論じたり探究課題を提示していく章と、マストで抑えておきたいブックガイドとしての書評で構成されるので、満足度と同時に次に手に取りたい本が増えた充実感がある。
ホイジンガやカイヨワ、ユールなどは既に読んでいたので、おさらい的なくだりも多かったが、それだけそれらの著書がゲームという概念を考えるにあたって核心をついていたのかを思い知らされた。

書籍『死に急ぐ鯨たち・もぐら日記』 著:安部公房
安部公房の随筆、対談、日記をまとめたものだが、今までの小説や随筆集とはまた違った角度から彼を見つめることができていい一冊だった。
『方舟さくら丸』に対する自己言及から、未完の遺作『飛ぶ男』へ向けての構想やリサーチが垣間見える他、彼の言語論や音楽・美術批評も伺えるので、満足度が高い。
美術の複製への耐性なさや、音楽の再演性についてについて触れているあたりは、最近の私自身の関心にも極めて近いところにあったのでちょっぴり嬉しくなった。

まとめ
10月は映画を一本しか見ていなかった。
けれども喫茶店に通い詰める習慣が生まれたお陰で読書が捗った。
アンディ・ウィアーの小説と、オードリー若林の随筆を立て続けに読んだけれど、どちらも読みやすく楽しい読書だった。
それに加えてゲームに関する評論を2冊読めたのも満足度が高い。
歴史についてを追ったあとに、現在掘り下げられているキーワードごとの評論に触れられたので、飲み込みやすい流れで読むことができた。
やたらめったらと本を読んでいるけれど、その本を読み終わったときに読みたい本にすぐ手を伸ばせる電子書籍は改めていいなと思えた。
そんな奔放さで次読む本を決めているので、積読も増えていく。
けれどもここ数ヶ月は毎日本を読めているので、いい具合に消化されていっている気もする。
無限に読みたい本があることを今月も嬉しく思う。
