執筆 演劇

「舞台を跨ぐ(あるいは生と仮死の点滅)」-田中すみれのダンスパフォーマンスに寄せて

4/30にUrBANGUILDにて開催されたパフォーマンスイベントに参加した田中すみれのステージにテキストを寄稿させていただきました。

彼女は大学時代からの友人で、また過去にyugeでダンス公演をしてくれたこともあるダンサーです。
彼女と僕は同じ喪失の痛みを共に抱えているですが、それについての言及はまた別の機会に作品と共に消化できたらと思います。

今回の公演では彼女は自身のステージ時間の30分とは別で、事前に60分のダンスを舞台裏で踊り、その延長で舞台に立つという試みを行いました。
それについてのヒアリングをもとに添えたテキストです。


舞台を跨ぐ(あるいは生と仮死の点滅)

人と人との関係性は、顔を合わせたりやり取りをするたびにその接点が点滅して、都合のいい連続性が行間を埋めていく。
その瞬間がなければ他者の人生を確信することの出来ない私たちは、自分の人生の舞台に登場していない他者がその間も存在しているのか否かすらはっきりと知ることが出来ない。
同様に自分が他者の人生の舞台に上がっていない間、きっと私たちはその人にとって仮死状態の演者であると言えるだろう。

制作をする人間は常に作家として生きているのか。
会社員は常に会社員として生きているのか。
コンビニ店員は常にコンビニ店員として生きているのか。

皆他者との関係性だけではなく、自身の人生の上にも割り振られた複数の舞台を往来している。

自分の担う役を降りることはなく、舞台が切り替わり続ける事で生と仮死がスイッチし続けるだけなのかもしれない。

幾重にも重なる他者の舞台と自身の舞台を跨ぎながら、複数の仮死状態を抱える私たちは、その都度その都度、生の点滅を確認し合うことしか出来ないのだ。

コニシムツキ(彫刻家/Alternative space yugeディレクター)

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