先日YouTube(Podcastでも)で活動していたラジオにやっと復帰ができた。
私の療養期間中に、相方の山口くんが一人でパーソナリティーを務め、番組を続けてくれていたおかげだ。
彼が一人で放送をしている間に、彼は放送内で「ションベン落語」なるものを披露していた。
なんだそれ。
意味がわからないと思うが、ションベン落語とはションベン落語なのだとしか言いようがない。
#48 しょんべんアワー「コニシとやまぐちのうたたね」
これがションベン落語だ。
これを見た上でも「これ何?」とはなるのだが、ともかく、これがションベン落語だ。ションベン落語らしい。
これを見た私は悔しかった。
別に彼のションベン落語が面白いからではないのだが、このラジオで落語もどきをやっているのが羨ましくて堪らなかった。
ラジオに復帰しなければ。
そう思い、私はやっと外に出られるようになった。
私がラジオに戻るならば、彼の落語に私が落語で答えなくてはいけない。
ラジオ内でやるには冗長で、登場人物に対してカミシモも分けずに演じられ、台本を見ながら演じる落語があってたまるか。
というわけで私は彼に対抗するためだけで落語風味の口上を用意することになった。
コトコト煮込む - 落語風味
一人暮らしなんていうのも素敵なもんですが、こういった寒い季節になるとどうにも寂しくてやってられない。
そんな気分をひしひしと感じるもんです。
実家にいた頃はテレビでも見ながらゴロゴロしていたら、母親がご飯を作ってくれていたわけだ。
母親
「あんた、ちょっとあんた。ケンジ!」
「ケンジ、そろそろご飯できるから食器出したりするの手伝いなさいよ」
ケンジ
「おお…わかったけど…父さんは?」
母親
「部屋でCDでもダラダラ聞いてるんじゃない?」
ケンジ
「ああ…兄ちゃんは?」
母親
「どうせ部屋でポチポチゲームやってるんじゃない?」
ケンジ
「なんで俺だけ手伝わなきゃいけないんだよ」
母親
「そらあんたがそこにいたからよ」
ケンジ
「それじゃあよ、父さんと兄ちゃんを読んでくるからさ、みんなでシュシューッとやっちまおう」
母親
「じゃあそれでいいから、サッサとそうして頂戴」
-扉を叩く音
ケンジ
「なあ父さん、母さんが晩御飯の準備手伝えって」
父親
「ああもうそんな時間か」
ケンジ
「母さんがさ、どうせ父さんは部屋でダラダラCDでも聞いてんだろって」
父親
「なんだと?聞き捨てならんな…」(リビングへ向かう)
「おい母さん!」
母親
「やっと出てきたよ。ご飯の準備手伝って頂戴」
父親
「あのね、俺はね、CDをダラダラ聞いているんじゃないんだよ。俺はバチバチに聞いてるんだよ」
母親
「そんなん知ったこっちゃないわよ」
「ダラダラ聴こうがバチバチ聴こうが知らないったら。ほら、ケンジも、お兄ちゃん呼んできて」
ケンジ
「おお、(戸を叩く)兄ちゃん、母さんが晩御飯の準備手伝えって」
兄
「うるさいな今いいところなんだよ」
ケンジ
「やっぱりだ。母さんがさ、どうせ兄ちゃんは部屋でポチポチゲームやってんだっていってたぞ」
兄
「なんだと?聞き捨てならねぇな…」(リビングへ向かう)
「なあ母さん!」
母親
「あんたも遅いねえ、やっと出てきた。もうご飯できちゃうよ」
兄
「あのね、俺はね、ポチポチゲームをやってるんじゃないんだよ。コツコツゲームをやってるんだよ!」
母親
「知ったこっちゃないよ!ご飯もうできちゃったから食べるわよ」
父親
「母さんいい匂いだな。ぐつぐつ煮えてうまそうなシチューだ」
母親
「あのね、これは私がコトコト煮込んでたの!」
「あんたたちがダラダラじゃなくてバチバチだとか、ポチポチじゃなくてコツコツだとかいってる間にグツグツになっちゃったじゃないの!」
ケンジ
「まあまあまあ!母さんも父さんも兄ちゃんも、いいじゃない!」
「ダラダラだろうがバチバチだろうがポチポチだろうがコツコツだろうがグツグツだろうがコトコトだろうが、みんなで楽しく食卓を囲むっていうのが一番大事なんじゃないの?」
「俺は宮沢家のみんなでかぷかぷ笑って過ごしたい」
母親
「賢治、あんた、やっぱり変わったオノマトペを使う子ね」
実際のラジオ
軽い後日談だが、宮沢賢治の文章は特徴的なオノマトペが登場することが多い。
二疋の蟹の子供らが青じろい水の底で話てゐました。
『やまなし』宮沢賢治
『クラムボンはわらつたよ。』
『クラムボンはかぷかぷわらつたよ。』
彼の独特なオノマトペの一つとして「かぷかぷ笑う」というものがあったので、それを引用したのだが、あろうことか山口くんはこの「かぷかぷ笑う」というオノマトペを知らなかったらしい。
ふざけるな。
彼に対抗するための落語風口上だったわけだが、肝心の元ネタが伝わらなかったのが悔しい。
主人公が宮沢賢治でしたというところは伝わったので良しとしよう。
またどこかでリベンジすることになりそうだ。
またどこかのタイミングで私は山口くんに「面白いやつ」と思ってもらうためだけに落語っぽい何かを作るだろう。
皆さんにも、落語というにはお粗末だが、せめてもの落語風味を感じてもらえたら幸いだ。