思弁逃避行

[#22]今に限る -思弁逃避行-

2023年3月29日

「今限定!ディズニーパッケージ」

そう書かれたインスタント麺がそこにあった。

また恐ろしいものをみてしまった。
それはスーパーのワゴンの中で悲しげに積まれていた。

今限定。

今季限定ではない。今だけなのだそうだ。

それはもう限定に限定されている。

なぜなら"今"とは時間を指す言葉の中で最も短く具体的なものだからだ。

言葉の上ので"今"は、それを耳にし意識したその瞬間、刹那の話になる。
その"今"が、文字として印刷され、しかも限定されているというのだ。
つまりこの印字されている"今"はその商品のパッケージを人が目にして認識するたびに訪れる。
こんなに希少なものはない。

つまり、先ほどは「この上なく限定されている」といったような書き方をしたが実はそうではないのかもしれない。
人が意識をしているその状態が常に"今"であり、それは流動的でほとんど永遠に近い。
ディズニーパッケージは"永遠"なのだ。

時間というものを認識する意識があるかぎり、我々は今という時間以外を過ごすことは不可能だと思っていた。
しかしそれは間違いだったのかもしれない。

このインスタント麺のディズニーパッケージが終了する時。
その時こそが"今"が終わる瞬間なのだ。

限定品とディズニーに歯向かってはいけない。

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