この世には昔、「免罪符」というものがあった。
この免罪符とは16世紀にカトリック教が発行していたもので、簡単に言えば「あなたの罪を許すよ券」である。
例えば、つまみ食いをしちゃったよ〜という時。
でも、免罪符があれば大丈夫!
人を傷つける嘘をついちゃったよ〜という時。
でも、免罪符があれば大丈夫!
上司の奥さんをグーで殴っちゃったよ〜という時。
でも、免罪符があれば大丈夫!
とんでもない代物だ。
許されるなよ。
ルターもブチ切れ。宗教改革も待ったなしだ。
そんなこんなでお騒がせな免罪符だが、実は現代にも免罪符は存在する。
クレープの皮である。
クレープは恐ろしいものだ。
皆は友人が掌に生クリームをたっぷり乗せ、それを数粒の果物と共に頬張っていたらどうだろうか。
私なら必死で止めるか、そいつの連絡先を端末から削除する。
しかしどうだろう。それがクレープの皮というものに包まれた瞬間、その奇怪な食事は正常なものになってしまうのだ。
こんなに恐ろしいものはあるだろうか。
クレープという名の現代の免罪符。
それは包んでしまえばどんな罪な食事も許されてしまうのだ。
このクレープというものに含まれるカロリーは一つでおおよそ560カロリーくらいだという。
このカロリーを消費するには3時間半のウォーキング、もしくは2時間のジョギングが必要だ。
つまりあの薄い皮の中には2時間のジョギングが包まれている。
しかし我々はそれに気づくことができない。
なぜならクレープがそれを包み、その罪を許してしまっているからだ。
クレープに許せない罪はない。
ほとんどショートケーキみたいなものを歩きながら食べたいよ〜という時。
でも、クレープに包めば大丈夫!
さっき甘いもの食べたけど、でっかいソーセージが食べたいよ〜という時。
でもクレープに包めば大丈夫!
生クリームにバナナと苺、それにチョコソースとチョコアイスを乗せた、よくわからないものを一度に食べたいよ〜という時!
でも、クレープに包めば大丈夫!
つまみ食いをしちゃったよ〜という時!
でもクレープに包めば大丈夫!
人を傷つける嘘をついちゃったよ〜という時。
でも、クレープで包めば大丈夫!
上司の奥さんをグーで殴っちゃったよ〜という時。
でも、クレープで包めば大丈夫!
このままではダメです。
私はここで、現代のルターを待つ。
食の宗教改革は近い。