思弁逃避行

[#15]免罪符で包んで -思弁逃避行-

2023年2月3日

この世には昔、「免罪符」というものがあった。

この免罪符とは16世紀にカトリック教が発行していたもので、簡単に言えば「あなたの罪を許すよ券」である。

例えば、つまみ食いをしちゃったよ〜という時。
でも、免罪符があれば大丈夫!

人を傷つける嘘をついちゃったよ〜という時。
でも、免罪符があれば大丈夫!

上司の奥さんをグーで殴っちゃったよ〜という時。
でも、免罪符があれば大丈夫!

とんでもない代物だ。
許されるなよ。
ルターもブチ切れ。宗教改革も待ったなしだ。

そんなこんなでお騒がせな免罪符だが、実は現代にも免罪符は存在する。

クレープの皮である。

クレープは恐ろしいものだ。
皆は友人が掌に生クリームをたっぷり乗せ、それを数粒の果物と共に頬張っていたらどうだろうか。
私なら必死で止めるか、そいつの連絡先を端末から削除する。
しかしどうだろう。それがクレープの皮というものに包まれた瞬間、その奇怪な食事は正常なものになってしまうのだ。
こんなに恐ろしいものはあるだろうか。

クレープという名の現代の免罪符。
それは包んでしまえばどんな罪な食事も許されてしまうのだ。

このクレープというものに含まれるカロリーは一つでおおよそ560カロリーくらいだという。
このカロリーを消費するには3時間半のウォーキング、もしくは2時間のジョギングが必要だ。
つまりあの薄い皮の中には2時間のジョギングが包まれている。
しかし我々はそれに気づくことができない。
なぜならクレープがそれを包み、その罪を許してしまっているからだ。

クレープに許せない罪はない。

ほとんどショートケーキみたいなものを歩きながら食べたいよ〜という時。
でも、クレープに包めば大丈夫!

さっき甘いもの食べたけど、でっかいソーセージが食べたいよ〜という時。
でもクレープに包めば大丈夫!

生クリームにバナナと苺、それにチョコソースとチョコアイスを乗せた、よくわからないものを一度に食べたいよ〜という時!
でも、クレープに包めば大丈夫!

つまみ食いをしちゃったよ〜という時!
でもクレープに包めば大丈夫!

人を傷つける嘘をついちゃったよ〜という時。
でも、クレープで包めば大丈夫!

上司の奥さんをグーで殴っちゃったよ〜という時。
でも、クレープで包めば大丈夫!

このままではダメです。
私はここで、現代のルターを待つ。
食の宗教改革は近い。

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