漫画

UMA,妖怪,エイリアンがごった煮の街で巻き起こるスタイリッシュ探偵談-『エリア51』作:久正人 について-

2023年5月2日

現在ジャンプ+で連載中の作品『ダンダダン』(作:龍幸伸)が面白い。

心霊現象やUMAがぶつかり合う展開は勿論、絵の上手さや構図の見せ方でもこちらを満足させてくれる話題作だ。

こういった都市伝説や妖怪、神話、宇宙人などありとあらゆる怪異が登場する漫画は、作り話のアベンジャーズのようでワクワクする。

そんな怪異たちがごった煮で登場する名作『エリア51』のことを思い出したので紹介したい。

有名な妖怪から、なんか聞いてことあるなという神話の登場人物までくまなく登場し、それらが街で引き起こされる事件に次々と絡んでいくのは超常推理モノとしてもたまらない。

『ダンダダン』にハマっている人はワクワクする要素がてんこ盛りなので、ぜひこの機会に読んでみてほしい。
(ターボババアも登場します)

あらすじ

ドラゴン、イエティ、ガネーシャ、宇宙人。

そんな世界中の異形を極秘にかき集め隔離した、アメリカ51番目の州・エリア51。

そこで探偵業を営む、人間の女性・真鯉徳子(マッコイ)のもとには、日夜さまざまな依頼が舞い込んでくる。

助手である河童のキシローとともに、こうした依頼を解決していくマッコイだが、彼女がエリア51へやってきたのには大きな理由があった。

https://mangapedia.com/エリア51-622lmvtcm

物語の舞台となるのがアメリカ某所のエリア51という街。

超常的な存在が日常となるこの街では、怪談やSF、神話、童話の住民たちがひしめき合うように生活を送るカオスな日々がおくられている。

主人公のマッコイはこの街で探偵をしてる女性。
彼女は付喪神として目覚めたヴィンテージの拳銃パイクを相棒に、助手の河童キシローと共に様々な事件の解決のために動き回る。

住民が住民なら起こる事件も事件。
心霊現象やエスパー事故、神々の政治など規模の振れ幅も規格外。

そしてその超常に対して超常を持ってして解決する。
予想外の事件を予想外の解決法で収めていくのがたまらない。

基本的には一話完結の事件が多かったりするが、以前の事件がその後の事件に繋がっていたり、マッコイの過去の掘り下げなどでどんどんストーリーも加速していく。

ストーリーの展開が面白いことは勿論、登場する怪異の解説なども含めてワクワクできる作品だ。

すゝめ

この物語の魅力はやはり主人公のマッコイがただの人間だというところにだろう。

物語が進むにつれて、彼女にも超常なる秘密があることがわかるが、「実は妖怪でした!」「神の生まれ変わりでした!」などの元も子もないような展開ではなく、超能力も霊能力も持たない生身の人間だ。

そんな彼女が神々や妖怪たちが巻き起こす事件をいかにして解決していくかがミソなのだ。

マッコイの精神的な強さや、仲間からの信頼、ハードボイルドなセリフのやり取り。
読めば読むほど彼女がカッコよくてたまらなくなってくる。

そして何よりも絵柄のかっこよさもこの漫画の魅力だろう。

ベタ塗りをガンガン使ったコントラストの強い陰影感や、アメコミのような太い線で戦闘シーンや新キャラの登場シーンがどれも痺れる。

天照や孫悟空、ゼウス、シヴァ神など多国籍な神々がきちんとチート級の強さで登場するのも嬉しい要素だ。

オカルト好きや、ハードボイルドな探偵物が好きな人には必ずハマる作品になると思うので、ぜひ手に取って見てほしい。

レビュー【ネタバレあり】

ここからは具体的なシーンなどに触れていきます。
作品をまだ見ていない方にはおすすめしません。

全15巻で読めるこのコンパクトな作品だが、中でも群を抜いて印象に残っているのは、やはり最終章とも言える鵺編だ。

過去に出てきた怪異たちの体の一部が集められ、この世で一番力を持つ猿の頭、狸の胴、虎の手足、蛇の尻尾を持った"ハイパー鵺"が誕生してしまうというくだりは鳥肌が立った。

そしてその鵺騒動の真相も、今まで散々仄めかしていた神々同士の抗争ではなく、天照が過去に侵していた罪による個人の復讐だったという予想外のオチも、この作品ならではのミスリードだと言えるだろう。

最初の蛇や、ドッペルゲンガーなど、立ち塞がるヴィランポジションの邪悪で不気味な描かれ方は、作者の画力や演出力も相まってしっかりとゾッとする。

そして細かいところ(天照の攻撃が完全にウルトラマンのスペシウム光線)などで、こちらの浪漫をくすぐってくる引き出しの多さに読み進めるたびにワクワクさせられた作品だった。

タイムトラベラーとサトリの回あたりから、この怪異たちだからこそのトリックに釘付けになり、一気に読み切ってしまった作品だ。

作者の作品は、打ち切りっぽい終わり方をしてしまった『ノブナガン』だけが何故かアニメ化さて、OPの曲の空耳(ホームセンターリスペクト!!!)でネットのおもちゃにされてしまうという不遇っぷりがあるが、『ダンダダン』が人気な今でこそ、この『エリア51』をハイクオリティなアニメで見てみたいと切に思う。

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