the pillowsというバンドに初めて触れたのは高校生の時だった。
北海道にある全寮制の高校に入った私は、実家のある名古屋を離れソワソワしていた。
その高校には春に新寮生歓迎会というイベントが開かれ、屋外でバーベキューをしながら新入生と先輩が混ざって軽音ライブやダンス、ジャグリング、パントマイムなどのパフォーマンスを披露するのだった。
そこで一つ上の先輩がピロウズのコピーバンドをやっていたのだ。
当時はロックバンドは全然聞かず、何かの拍子でハマった福山雅治をひたすら狂ったように聴いていたのだが、全く知らないピロウズを演奏するそのライブが、なぜだかむちゃくちゃカッコよく思えた。
当時私と同室だったS先輩がギターを務め、バンドの相談などで部屋によく顔をだすA先輩がベースボーカルを務めるバンドだったので、特に気にかけていたというのもあるかもしれない。
けれど、知らないバンドだったピロウズのその曲が、寮の裏に積まれたしょぼい音響から流れたその演奏が、えらく眩しく感じた事を覚えている。
のちにA先輩はピロウズについて色々と教えてくれた。
サブスクなどが特になかった時期だったので、「ピロウズのCDを買おうと思うんだけど、どのアルバムから聴き始めたらいいですか」と相談すると、A先輩は数枚のアルバムを挙げながら「でもこのアルバムもいいんだよな…」と私を置いてきぼりではしゃいでいて、それがなんだかとても羨ましくてワクワクした。
かくしてピロウズのアルバムをひとまず(中古でだが)3枚買った私は嬉々としてそれをリピートして聴き続けたのだった。
『LITTLE BUSTERS』
『Thank you, my twilight』
『PIED PIPER』
この3枚が初めてのピロウズのアルバムだった。
中古の為すでに擦り切れている歌詞カードを、さらに痛めながらそのページを眺めて曲を聴いていた。
2012年の私は、1998年に発売された『LITTLE BUSTERS』のCDを部屋のコンポで何度でも回転させ、iPod nanoに詰め込んだそれを何度でもタップした。
ザラついた乾きを感じるような哀愁漂う歌詞に、すみで燻りながらも目を光らせる強い歌詞に、飄々としながら底意地の悪そうな歌詞に、何度も当時の私はすがりついた。
その後、私にピロウズを教えてくれた先輩の卒業が近づいた時、それまで「音楽は聴く専門だからなぁ」と楽器を触ろうとしなかった私は(なんだその専門は)、衝動的に「ベースを始めるので僕に教えてください」とA先輩の部屋の戸を叩いたのだった。
ピロウズのコピーバンドを始めて(というよりも楽器を始めたことで)、私はピロウズのバンドとしての魅力にさらにのめり込んだ。
ツインギターの掛け合いのかっこよさ、ピック弾きベースのどっしりと構えた渋さ、タイトなドラムの頼もしさ。
無意識に身近な先輩へ投影していたその憧れは、その時にやっとピロウズというバンド自体を正面から捉え、輝いていた。
今の私はバンドもしていないし、ピロウズのようなロックバンドよりもアンビエント系の音楽を聴くことの方が多くなった。
けれどもやっぱり高校時代に出会った音楽はいつでもとびきりの輝きを放ち続けてくれる。
ふと思い出したようにピロウズを聴くと「やっぱり無茶苦茶かっこいいじゃんか!」と痺れるのだ。
思えばピロウズを聴き始めたことで、oasisやRadiohead、Pixiesなどを聴くようになった。そこからどんどん派生して好きな音楽が増えていった。
今でも自分の中でカッコいいギター、カッコいい歌詞、カッコいいメロディはあの3枚のアルバムから根を這うように続いているのだろうか。
ありがとうthe pillows!!!
ただひたすらに自分の中でのピロウズという存在を掘り起こしていくだけの記事なってしまったけれど、改めて聞き返したアルバムについて詳細に書いた記事を投稿する予定なので、それをきっかけにでもピロウズを聴くなんてことがあったら私はとても嬉しい。
それでは。