漫才

[M-1グランプリ2002]フットボールアワー-ネタ書き起こし/審査/振り返り-

2023年6月18日

M-1グランプリ2022

5組目

フットボールアワー

ネタ

後藤
「はいどうも、フットボールアワーですよろしくお願いします」
「出てきてそうそうこんなこと言いたくないんですけどね」

岩尾
「何言われんのやろ…」

後藤
「お前な、ボサっとするのやめてくれへん?」

岩尾
「何がよ」

後藤
「もっとシュッと男らしくなってもらわな困んのやお前」

岩尾
「男らしいわ!」

後藤
「いや男らしないわお前」

岩尾
「"男"らしいわ」
「どうやら」

後藤
「それはわかっとんねん」
「男なのはわかっとんねん」

岩尾
「オカンが言うてた」

後藤
「自分でわかるやろそこ」

岩尾
「なんやねんな、じゃあお前は男らしいんか」

後藤
「当たり前なやいか」
「たとえば俺がファミリーレストラン行くやろ。ほんで店員の接客態度が悪かったらカツーンと怒るわ」

岩尾
「ちゃんと言える?」

後藤
「当たり前や」

-二人、立ち位置についてコント入りをする

後藤
「ウィーン(自動ドア)すみませーん!」

岩尾
「いらっしゃいませ、こんばんは〜!」
「いらっしゃいませ、こんばんは〜!」
「お客様、お客様でよろしかったですか?」

後藤
「いやそうですよ。他に何様が来るの」

岩尾
「何名様でしょうか?」

後藤
「ああ、一人です」

岩尾
「おひとりぼっちでよろしかったでしょうか〜?」

後藤
「やめえよお前」

岩尾
「ひとりぼっちご案内いたしま〜す!」

後藤
「お前恥ずかしいからやめろ」

岩尾
「”ファミリー”レストラン言うてるのに」

後藤
「かめへんやないかそこは」
「一人で来ようが五人で来ようが勝手やろが」

岩尾
「こちらのお席でよろしかったでしょうか〜?」

後藤
「…その、言い方やめてくれへん?」

岩尾
「よろしすぎたでしょうか〜!」

後藤
「いやすぎてませんけど」

岩尾
「よろしくお伝え願えますか〜!」

後藤
「誰に何を言うの、バカ」
「もうええよ、腹減ってるからメニューください」

岩尾
「メニューの方当店ではお品書きと呼んでおりますがよろしいでしょうか?」

後藤
「いやええよ別に」

岩尾
「『お品書き=メニュー』という構図、頭で描けますでしょうか?」

後藤
「いや描けてます。ハッキリと描けてますから」

岩尾
「それではこちらメニューになります」

後藤
「メニュー言うたやないかお前」
「お品書きちゃうんかこの店」
「わかった、もう決める。これにする」(メニューを指差して)

岩尾
「お決まりでしたらそちらのベルの方を押していただけますでしょうか」

後藤
「いやおるやん!!」
「いてるやんか!」

岩尾
「お決まりでしたらそちらのベルの方を…」

後藤
「いやこれはおれへんときの為のベルやから」
「これください。ハンバーグステーキください」

-岩尾、後藤を無視して遠くを見つめている

後藤
「いやあの、ハンバーグステーキください」

-岩尾、無視し続ける
-後藤、痺れを切らしてベルを押す

後藤
「ピンポーン」

岩尾
「お決まりでしょうか〜」

後藤
「ハンバーグや!!!」
「ハンバーグステーキや言うとるやろが!!!」

岩尾
「あんまり大きな声出されると困ります…」

後藤
「お前が言わしとんのやないか」

岩尾
「(バックを見ながら)バイトの高校生が引いております」

後藤
「いや待てお前」

岩尾
「お静かにお願いします…」

後藤
「知らんがなそんなもん!」

岩尾
「2階でおじいちゃんが寝ておりますので…」

後藤
「なんでおんねん!」
「ちょっと待てお前。これ実家の1階でやってんのか?」

岩尾
「えーと、生姜焼きご膳でしたね?」

後藤
「いやハンバーグステーキや!」

岩尾
「ハンバーグステーキですね」
「ハンバーグステーキ、鉄板の方熱くなっておりますのでお気をつけくださいませ〜」

後藤
「持ってくる時に言えやそれ。なんで今言うねん」

岩尾
「心構えとしてね、あらかじめ」

後藤
「いや出来ております」

岩尾
「え〜、ハンバーグがですね、種類ございまして」
「アメリカンハンバーグと和風ハンバーグがございますけれども」

後藤
「ほなアメリカンハンバーグで」

岩尾
「アメリカンハンバーグを作っている人間は和風ですがよろしいですか?」

後藤
「いやええよ別に」

岩尾
「完っ全に和風ですけれども」

後藤
「いや別にアメリカ人が作ってるとも思ってないから」

岩尾
「家でもベッドで寝んと布団で寝るタイプでして…」
「申し訳ありません!!」(深く頭を下げる)

後藤
「そんな謝らんでいいですよ!」

岩尾
「和風でして…!」

後藤
「いいですいいです!」

岩尾
「よろしいでしょうか…?」

後藤
「いいですよ」

岩尾
「お客様、お得なセットもございますよ」

後藤
「セットは何があるんですか?」

岩尾
「ライス、ドリンク、シェフの気まぐれサラダとなっております」

後藤
「えらい洒落たのやってんね。日替わりで。今日はどんなのやってんの」

岩尾
「え〜今日はやっておりません」

後藤
「気まぐれやな!気まぐれすぎひんか」

岩尾
「かわりにシェフの気晴らしサラダがございます」

後藤
「いややな、気晴らしにいろんなもん入れられてそうやないか」

岩尾
「はい、野菜かどうかの判別もつきません」

後藤
「いやあかんやろそれ」

岩尾
「基本的に地べたでの調理が予想されます」

後藤
「ちょっと待てお前」

岩尾
「プラス200円でおつけ出来ますよ?」

後藤
「なんで金出してそんなわけわからんもの買わなあかんの」

岩尾
「ではドリンクはいかがでしょうか」

後藤
「ほなアイスコーヒーで」

岩尾
「アイスコーヒー」
「ではお冷をお食事の後にお持ちしてもよろしいでしょうか?」

後藤
「いや先持ってこいよ。お冷は先、アイスコーヒーが後や」

岩尾
「それではレジでお支払いの時にお持ちしましょうか」

後藤
「いや遅いねんて」

岩尾
「レシートと引き換えに…」

後藤
「いやちょっと待てお前、どんなシステムやねん」
「俺金払うのに別に喉乾かへんから」

岩尾
「かしこまりました〜」(深々とお辞儀する)

後藤
「聞いてんのかお前?」

岩尾
「それではですね、ご注文の方を鼻につく感じで繰り返させていただきます」

後藤
「いやなんでやねん」

岩尾
(舐めた感じで)「え〜ハンバーグステーキとぉ〜?」
「ライス一つでぇ〜?」

後藤
「待て!」

岩尾
「ストローいる?」

後藤
「いるわ!」

岩尾
「使う?緊張してない?」

後藤
「いやしてないよ」
「なんでお前にそんなこと言われなあかんねん」

岩尾
「申し訳ございません」(深々とお辞儀する)

後藤
「謝るんやったら最初からすなよ」

岩尾
「それではですね、ご注文の方をおっぱいのことを考えながら繰り返させていただきます」

後藤
「なんでやねん」

岩尾
(斜め上を見ながら)「え〜、アメリカンハンバーグとライス…(にやけて途中で吹き出す)」

後藤
「笑うな気持ち悪い!」

岩尾
「揉んで…」

後藤
「揉んでってなんやねん」

岩尾
「揉み加減はミディアムで?」

後藤
「なんやねんそれは!」

-岩尾、深くお辞儀をして料理を持ってくる

岩尾
「お待たせしました」

後藤
「はい」

岩尾
「それではご注文の方、ひっくり返させてもらいます」

後藤
「いやあかん!」
「もうええわ」

審査

会場審査員

立川 談志70点
中田 カウス97点
島田 洋七94点
ラサール石井95点
大竹 まこと91点
松本 人志85点
島田 紳助89点

総得点

621点

振り返り

やっぱり無茶苦茶面白い。

去年のネタでも触れたが、この時期には後藤に持っていた「たとえツッコミ」はまだ武器として出されていない。

ツッコミはシンプルだけれども、その分岩尾の素っ頓狂なボケが際立つ面白さだった。
後藤のツッコミの後に岩尾がボソッと付け加えるディティールが、さらに笑いを追って足してくるのがニクい。

メニュー=お品書きのくだりをやった後にサラッと岩尾がメニューというのを即座に突っ込む流れは、ベタな展開なのにテンポの良さと岩尾のしれっとした雰囲気で無茶苦茶笑ってしまった。

去年のネタの時には話題やシチュエーションをコロコロ変えながら、色々なボケやツッコミを展開していくという構成だったことから一変。
今年のネタではファミレスというシチュエーションでの店員と客のチグハグなやりとりという設定が一貫していた。
個人的にはこういった流れのネタの方が好みなので、去年よりさらにハマることができた。

今はMCをしたりギターネタなどでガシガシ目立っている後藤だけれども、この時期のフットボールアワーの面白さを独特のものとして自立させていたのは、間違いなく岩尾のこのホニャホニャと頼りなさげな立ち振る舞いだろう。

とぼけているのか、ほんまにおかしい人なのかわからなくなりそうなこのポーカーフェイス。
なんならそのポーカーフェイス自体がすでにちょっと面白いのもズルい気がしてきた。

後藤のツッコミは「ちょっと待てお前」「どういうことやねん」という定型のフレーズが多かったり、同じツッコミを改めて二度言ったりなど、今のフットボールアワーのイメージに対して、ワードセンスよりもテンポを重視しているような印象があった。

ここからさらに後藤のツッコミワードでも笑わせてくるという進化を果たすことを知っていると、シンプルなツッコミに少し呆気に取られるが、冷静に考えるとすでに面白いのにここからさらに面白くなるのかと恐ろしくなるコンビだ。

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