漫才

[M-1グランプリ2002]笑い飯-ネタ書き起こし/審査/振り返り-

2023年6月30日

M-1グランプリ2022

6組目

笑い飯

ネタ

西田
「どうも、笑い飯です」

哲夫
「よろしくお願いします」
「せやけどね、羨ましいことちゅうのは多いですね」

西田
「たとえば何です?」

哲夫
「この間もテレビ見とって、牛丼特集とかいってやっとんねん」

西田
「そんなんたまらんな」

哲夫
「あんなんみてたらヨダレとか出てくんねん」
「どうしても食べたくなってやな、近所の24時間やってる吉野家牛(よしのやぎゅう)行ってやな、弁当のやつ買って」

西田
「…なんか略し方おかしない?」
「なんか野牛みたいやん」

哲夫
「吉野…吉野…」

西田
「吉野ってなんや」

哲夫
「あ、ちゃうわ、牛牛(うしぎゅう)や」

西田
「牛牛(うしぎゅう)やったらみんな牛やないかそれ!」
「何考えてんねんお前、略し方おかしいって、ちゃうちゃうちゃう」
「羨ましいっていったらな、俺Tシャツ買いに行ったんやけど、おんなじようなん買ってあっちの方が良かったとかそんなんあるやん」

哲夫
「あっちのデザインの方が羨ましいなみたいなのあるわな」

西田
「(胸元を指して)ここに"I"って書いてあって、ハートの赤いの書いてあって、"NY"って書いてるのあるやん」

哲夫
「アイラブニューヨークって書いてあるやるあるね」

西田
「あれ似たようなん買うたけど間違って買うたんや」

哲夫
「お前どんなん買うたんや」

西田
「ここ青で"THE"って書いてあってな、”めしや”って書いてある」

哲夫
「ザめしやのTシャツあるか!」
「何を買うてんねんお前」

哲夫
「せやけどな、羨ましいといったら、俺高校のとき弁当持って学校行ってたんやけどな」

西田
「俺もや」

哲夫
「でも弁当毎日やったら飽きてくるやんか」

西田
「せやな、オカンが作る弁当毎回一緒やねん」

哲夫
「そんでたまに横でパン食うてる奴がおんねん」

西田
「わかるわ…」

哲夫
「あれ羨ましいよな」

西田
「ちょっと一口ちょうだいとか」

哲夫
「なるやんか。俺ちょっと弁当食うとくから、お前パン食っといて」

西田
「はいはい」

-弁当を開ける哲夫、パンの袋を開ける西田

哲夫
「うわぁ…またオカンこの白ごはんの上に海苔と梅干し使ってオヤジの似顔絵描いてるやんけ」
「俺の似顔絵描けや」

-西田、パンを食べながらストロー啜る
-哲夫、西田に気づく

哲夫
「お!西田、今日ブリック飲みながらパン食うとるやんけ!」

哲夫
「ちょっと一口もろたろ」
「ちょっと、西田」

-西田、大きな一口で最後のパンを食べ切る

哲夫
「食べ終わるな!」
「できへんやないか!」

西田
「遅いねんもんお前、おにぎりがどうのこうの言うてるから」

哲夫
「言うやんかそんなもん」

西田
「もうええわ代われ。俺弁当食うわ」

-弁当を開ける西田、パンの袋を開ける哲夫

西田
「わ、最悪や。また切り干し大根で"アホ"って書いてあるわ」

-哲夫、パンを食べている

西田
「お、中西今日パンやんけ!」
「おい、中西、パン一口…」

哲夫
「おっ、うまい、うまい」(舌でパンをベロベロ舐める)

西田
「お前クリームだけ先にねぶるな!」
「そんなんいらんわアホ!羨ましいのをせえやお前」

哲夫
「ほなまた俺が弁当するわ」

-弁当を開ける哲夫、パンの袋を開ける西田

哲夫
「また弁当や、嫌やな〜」
「お、西田パンちょっと…」

-西田、袋に肩まで手を突っ込んでパンを出そうとする

哲夫
「どんなパンやねん!」

-西田、底からひとつまみのパンを取って食べる

哲夫
「ほんでパンちょっとかい」
「代われアホ」

西田
「おい中西、今日パンなんか。ちょっと一口…」

-哲夫、屈んで床から拾って差し出す

西田
「落ちたやついらんわ!」
「代われ」

-哲夫、弁当箱を開ける
-西田、パンを片手にストローを啜る

哲夫
「うわ〜また弁当や〜」
「西田また今日もブリック飲みながらパン食うとるやんけ!」
「一口もろたろ」
「なあ西田、パン一口…」

-西田、もう片手からもストローを啜る

哲夫
「そっちもブリックかい!」
「なんで二つとも飲んでんねんアホ!」

西田
「喉からからやねん」

哲夫
「知らんがな」
「いやでもパンはパンでも、小学生の頃は給食のパンとかあったやろ」

西田
「あれあんま美味しなかったな」

哲夫
「あんま美味しないねん」
「美味しないくせにな、工場見学とか連れて行きよんねん」

西田
「行ったな」

哲夫
「それを工場長が製造工程を説明したりしよんな」

西田
「やっとたな」

哲夫
「ちょっと覚えてんで俺」

西田
「どんなんや」

-哲夫、工場長として説明を始める
-西田、小学生として説明を聞く

哲夫
「(拡声器を持って)ピーーー」
「あれ?」
「ピーーーーー」

西田
「それ押すところ間違えてる」

哲夫
「あっ(拡声器のボタンを押し直す)」
「あ、どうも皆さんおはようございま〜す!」
「後ろのタンクにね、小麦粉が入ってま〜す!」

-西田、首を伸ばして指してる方を覗く

哲夫
「タンクからね、ベルトコンベア伸びてますけど、その先のが男子便所になります〜」
「その隣が女子便所です〜」
「男子男子女子女子の順番になってます〜」
「ほんで、女子便所からベルトコンベアが出てまして」

西田
「(覗き込みながら)ほんまや」

哲夫
「突き当たり、オーブントースターみたいな場所ありますね」

西田
「オーブントースターや」

哲夫
「あれが女子便所です」

西田
「みな便所やないか!」
「どこでパン焼くねんそれ!」
「そんなんちゃうかったやろお前。ちゃんと教えたるわ」

-西田、工場長として説明を始める
-西田が斜め掛けのベルトを体にかける

哲夫
「何でお前古いタイプの肩下げのスピーカーやねん!」
「俺こんなん(手持ちの拡声器)でやってたやろがい」

西田
「(ボタンを押し間違えて)ウ〜〜〜ウ〜〜〜」

哲夫
「ウーウー言うてるやんか」

西田
「ウ〜〜〜、皆さんこんにちは」
「皆さん後ろご覧くださ〜い」
「あそこの後ろのおっきな汚いタンク」

哲夫
「汚いとか言うたらあかん」

西田
「中にあまり美味しくない小麦粉が入ってます〜」

哲夫
「美味しくないも言うたらあかん」

西田
「これを焼くと皆さんの美味しい給食になります〜」

哲夫
「美味しないやろそんなもの!代われお前」

-哲夫、拡声器を持って工場長として説明を始める

哲夫
「皆さんこんにちは〜」
「向こう見てください。白い大きな建物ありますね。あれが市役所です」
「その隣の黒い小さな建物、あれがウチのパン工場です」

西田
「どっから見とんねん!丘かなんかやないかアホ!」
「中見せろや中を」

-西田、拡声器を持って工場長

西田
「はい皆さんこんにちは〜」
「えー、3泊4日パンのツアー」

哲夫
「そんなんないわ!」

-哲夫、拡声器を持って工場長

哲夫
「え〜それではくす玉を割っていただきます」

西田
「そんなんもないわアホ!」
「(ファンファーレのように)パンパパパーン♪ パンパンパン パンパパパーン♪」

哲夫
「そのパンやないねん!」
「パパパーン!パン パン パン パーン!(暴れん坊将軍のメインテーマ)」

西田
「暴れん坊将軍やないか!」

哲夫
「暴れん坊将軍!!!」

西田
「バババーン!!バン!バン!バン!バーン!!!(迫真の表情で暴れん坊将軍のメインテーマ)」

哲夫
「暴れん坊将軍!!!」

西田
「バババーン!!!」

哲夫
「暴れん坊…」

西田
「ババーーン!!!」

哲夫
「暴れ…」

西田
「バババーン!!」

哲夫
「あ、あば、あば、あば…」

西田
「ババーン!バン!バン!バババーン!」
「カーーーッ!カーーーーッ!」

哲夫
「カーやあらへんがな」

西田
「ふぅ…」

哲夫
「せやけどな、工場長が説明終わったらな、その後生徒の質問とか受付よんねん」

西田
「そんなんもしとったな」

哲夫
「俺が生徒するわ」

-西田が工場長として説明をする
-哲夫が座って話を聞く小学生をする

西田
「皆さん何か質問とかわからないことある人〜?」

哲夫
「はい!」

西田
「はい、きみ!」

哲夫
「この工場は何を作ってるんですか!」

西田
「パンです。座れ!」
「代われ」

-哲夫が工場長として説明をする
-西田が座って話を聞く小学生をする

哲夫
「はい、じゃあ質問ある人、手あげて〜」

西田
「はい!」

哲夫
「はい、その髪の毛の長い子」

西田
「おばあさんの仕事は…」

哲夫
「おじさんや!わかるやろ!」
「代われ」

-西田が工場長として説明をする
-哲夫が座って話を聞く小学生をする

西田
「なんか質問ある人〜」

哲夫
「はい!」

西田
「きみ!」

哲夫
「僕のちんちんは…」

西田
「座れ!!!」
「代われ」

哲夫
「はい質問ある人〜」

西田
「(座り姿勢から垂直に飛び上がって)はい!」

哲夫
「なにしてんねんそれ!代われ」

西田
「質問ある人」

哲夫
「(片手と片足を前方に出して)はい!」

西田
「何やねんそれは!代われ!」

哲夫
「はい質問ある人」

西田
「はい!パンっていうのは…(仰向けに倒れる)」

哲夫
「何でこけてんねん!」
「もうええわ」

審査

会場審査員

立川 談志70点
中田 カウス83点
島田 洋七84点
ラサール石井84点
大竹 まこと80点
松本 人志80点
島田 紳助86点

総得点

567点

振り返り

無茶苦茶面白い。何なんだ本当に。

哲夫の「西田きょうブリック飲みながらパン食うてるやん〜!!」の言い方が無茶苦茶嬉しいそうなのが序盤から笑ってしまった。
そんな「ブリック」ってオモシロワードでもないだろ。勝手にオモシロワードみたいに使うなよ。

2023年に「ザめしや」とか「ブリック」などの言葉が出てきてもピンとこない可能性があるので、今回の記事だけ例外的に注釈的な画像を挿し込んだ。
ザめしやとかも何年振りに聞いたかわからない。無茶苦茶笑った。

Wボケとして独自のスタイルを確立しているので、他の漫才では見ない畳み掛け方をしてくるのが後半圧巻だ。

そして単純にボケ数が多いという話だけではなく、一個一個のボケが本当に何を言っているのかわからなくて面白い。
それなのにWボケゆえ二人とも狂っているので、ボケを泳がせてきたりとかもするのがズルい。

序盤の弁当のくだりとか何なんだ。「海苔で親父の似顔絵描いてる」でも面白いのに、コメントが「俺の似顔絵かけよ」なのも面白い。

パン工場でも「ベルトコンベアの先にあるのが男子トイレ」「そして女子トイレからベルトコンベアが出てる」の時点で何でだよとなるのに、西田はそれを受けて向こう側を覗き込みながら「ホンマや」とつぶやく。ホンマなんかい。
だからこそその後の西田の「みな便所やないか」でゲラゲラ笑った。

しかし、やり取りや動きをじっくり見せ、泳がしてツッコむ流れから後半はテンポアップしていくのも気持ちがいい。

交代の時のやりとりも省略されていき、ただの大声で笑わせてきたり、ただの変な動きで笑わせてくるように移行していく。

いわゆる"見事な漫才"というのは武道で言う「形」としてのような見応えがあったりするけれども、笑い飯のネタはどつき合いを見ているような種類の見応えな気がする。

ここから8年、優勝候補として出場し続けるのが嘘のようだ。

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