漫才

[M-1グランプリ2002]アメリカザリガニ-ネタ書き起こし/審査/振り返り-

M-1グランプリ2002

8組目

アメリカザリガニ

ネタ

平井
「まああのね、なんですか」
「海外ではカーチェイスとかあるね」

柳原
「あらあえらいことなっとるよ。何百キロでガガガや」

平井
「あれ日本でやったらもっと危ないね」

柳原
「あれはもっと狭いからえらいことなるで」
(急にコントいりして)「よっしゃい!」

平井
「おっ?!」

柳原
「銀行強盗成功じゃい!」
「あとはこの車乗って逃げるだけや!行くぞ!」

-二人とも席に乗り込む

柳原
「ぶ〜〜〜ん!」

-二人ともハンドルを握っている

柳原
「なんでハンドル二つあんねん!」
「どこ行くねんお前は!」

-平井、肩をすくめる

柳原
「なんの顔してねん、やってもたみたいな顔するなよ」
「俺右行きたい、お前左行きたい、車パーン割れるわアホ」

平井
(左右に割れた車を戻すような仕草)「またこう、戻るかもしれん」

柳原
「なんでやんねん。道は続くやないがな」
「ええねん、俺が運転するから黙っとけ!行くぞ!」
(ハンドルを握って)「ぶ〜〜〜〜ん!」

平井
(横で柳原を眺め続け)「…おい!」

柳原
「なんや」

平井
「危ない…!」

柳原
「わかっとるわそんなこと!」
「今飛ばしとんねん」

平井
「ベルト!」

柳原
「もうええやないかそんな細かいこと」

平井
「危ない!」

柳原
「うるっさいな別にええがな…」

-柳原が渋々シートベルトを引っ張り出す
-平井がそれを受け取って自分の腰で止めようとする

柳原
「なんで二人で一つやねん!」
「運転しづらいわ俺!なんやこのがっちりホールドは!」

平井
「知らんがな」

柳原
「俺はなに田天功やねん!」

平井
「引田しかないよ」

柳原
「わかってるわそんなもん」

大規模な脱出マジックで当時人気だった引田天功

平井
「俺暇やねん!」

柳原
「ほなお前が運転せえよ!左ハンドル設定や、左ハンドル」

平井
「…ええの?」

柳原
「喜ぶな」
「ええよ早よ走れ!」

-平井がハンドルを持って運転を始める

柳原
「そこ右右右!」

平井
(右手右足を陽気に踏み出しながら)
「カッチ…カッチ…」

柳原
「そんでそこ左!」

平井
(左手左足を陽気に踏み出しながら)
「カッチ…カッチ…」

柳原
「ほんで次また右!」

平井
(右手右足を陽気に踏み出しながら)
「カッチ…」

柳原
「何をしてんねんさっきから!」

平井
「ウィンカーやんか」

柳原
「わかっとるわ!」
「そんなん車がやってくれるがな」
「ハザード」(二人同時に両手右足をふわっと上げる)
「いらんねんそんなん!ハイヒールさんみたいになっとるがな」

平井
「あんたもやったがな」

柳原
「みてみ!お前がいらんことしてるからパトカー追いついてきたやないか!どうすんねん!」

平井
「じゃあ僕が奥の手を使いますよ…」

柳原
「そんな機能ついてるの?!この車に!」

平井
「はい…!」

柳原
「よっしゃ見せたれ!」

平井
「行くぞ!パワ〜〜〜〜〜…」
「ウィンドウ!ウィーン」

柳原
「窓開いてる〜〜〜!」
「お前これ純正やんけ、元からついてるやん」
「何してんねん!もうええ、車置いて逃げるぞ!」

平井
「え、もうええの?」

柳原
「車置いて逃げる!」

-二人で足踏みをして走って逃げ出す
-その間ずっと平井は柳原の顔を見ている

柳原
「見過ぎやお前!」

平井
「どこ行ったらええの?」

柳原
「ついてきたらええ!ついてきたらええねん!」
「ワンワンワン!あちゃー!えらいこっちゃ!」(反対側を指差す)
「警察犬や!もう逃げられへん!くそ〜!」

平井
「僕に任せてください」

柳原
「お前向こうは訓練された犬やぞ、大丈夫か?」

平井
「大丈夫です!」

柳原
「きいつけろよ!」

-平井、警察犬に近づいていく

平井
「グアア〜〜〜!」(片腕を押さえて戻ってくる)

柳原
「ああ〜やっぱり!」

平井
「犬に…腕を…」

柳原
「大丈夫か!」

平井
「踏まれた…」

柳原
「大したことない!」
「大丈夫やで〜!肉球やん柔らかい柔らかい〜!」

-平井が肉球を模した両手で柳原の顔に触る

柳原
「ん〜ちょっと冷たい」
「なんの話やねん!」
「もうええ、逃げるぞ!」

-二人、また走る

平井
(足元で戯れるように)「おい、やめろやめろ〜」

柳原
「警察犬懐くか!」
「訓練されとんねん!どんだけ優しい心やねんお前は!」

平井
(肩を指差して)「ここに野鳥がとまるくらい」

柳原
「やかましわ!ずっと山育ちかお前は!」
「もういくぞついて来い!」
「ピカ!うわ!サーチライトヘリコプターや!えらいこっちゃ!」

平井
「私に任せてください…!」

柳原
「何?!」

平井
「こう見えても昔、高校野球児だったんです…」
(徐に石を拾う)

柳原
「やくたつたないか!」

平井
「この石を使って…!」

柳原
「よし、いったれ!」

-平井、持ってた石を柳原に渡して座り込む

平井
「よし来い〜!」

柳原
「キャッチャーかい!」
「今の流れやったら投げてパリンちゃうんかお前!」

平井
「そっちじゃない(不服そうに)」

柳原
「なんで怒ってんねん」
「もうあかん、逃げられへん〜!」

平井
「大丈夫です…!」

柳原
「何?!」

平井
「目の前にあれ、高速あるじゃないですか」

柳原
「うん」

平井
「あっこ、横切ります…!」

柳原
「大丈夫か?危険やぞ!」

平井
「私についてきてくださいよ!」

-平井、柳原を庇うような体勢で渡るタイミングを見計らう

平井
「よし!」
(踏み出す)
「どん!」

柳原
「轢かれてる〜!」

-二人ともスローモーションで動き始める
-吹っ飛ぶ平井、手を伸ばす柳原

柳原
「ひらい〜!」

平井
「やなぎさわ〜!」

柳原
「柳原!はら!間違えんとって!」

平井
「今までのことが走馬灯のように駆け巡る〜!」(吹っ飛びながら)

柳原
「死ぬ時はそうやいうな〜」

平井
「昭和48年3月12日に生まれ〜」

柳原
「うん〜」

平井
「今に至る〜」

柳原
「みじか!」
「人生ぺらぺらやで、大丈夫か平井〜!」

-平井が地面に倒れ込む
-スローモーションがとける

柳原
「ひ、平井〜〜〜!」

-平井、地面を転がっていき、腕枕で寝そべる形に落ち着く

柳原
「無茶苦茶余裕やん!」
「日曜日のお父さんみたい」

-平井、片手でリモコンをいじる仕草

柳原
「変えんなチャンネル!」
「お前そんな元気やったら戻ってこい!」

-平井が起きあがろうとして、両足で反動をつける

柳原
「そやそや!ネック〜スプリング!」

-平井、失敗する

柳原
「できへんのかい!」
「お前できへんのやったら余計なことすな!」
「お前がそんなんしてる間に警察に囲まれてるやないか!」

平井
「こうなったら奥の、なんかすっごい奥の手を使うしかないですね」

柳原
「まだあんねんな?!頼むぞ!」

平井
「う〜〜〜ん…」
「ごめんなさい」(両手をお縄に差し出す)

柳原
「捕まんのかい!もうええわ!」

審査

会場審査員

立川 談志70点
中田 カウス83点
島田 洋七83点
ラサール石井78点
大竹 まこと78点
松本 人志60点
島田 紳助73点

総得点

525点

振り返り

二人がカーチェイスをしていくネタだが、平井がずっとそんなに乗り気じゃなさそうなのがちょっと面白い。

柳原がチャカチャカ進めていくのに対して、平井はずっとちょっと退屈そう。
なのにボケるターンが来た時はちょっと楽しそうで安心する。なんなんだ。

この平井の無感情と無邪気を行き来するような温度感の低いボケに、柳原の甲高い声のツッコミがスパーンと入ってくるのはやっぱり見ていて気持ちがいい。

前回でも思ったが、ジェスチャーや動きで笑いをとる際の、ツッコミの言葉の削り方が上手いなと思う。

短いフレーズで済むように砕かれているので、文面だけで見るとイマイチ分かりずらいかもしれないが、映像で見るとその端的さを感じられるだろう。

けれども、シンプルに削ぎ落とされているというわけでもなく、わちゃわちゃと小ボケをあしらったりするくだりでくすぐってくるのでずっと楽しい。

後半もスローモーション劇場だったり、ネックスプリングに挑戦したり、動きもあるネタなので退屈もしないような展開をしてくれている。

お父さんがチャンネルを変えるくだり、無茶苦茶好きでした。
ぜひ映像で見てほしい。

ただ今回の大会では現状最下位の点数がついてしまった。

面白かったが、ベタなボケをストレートに突っ込む流れが多かったところが、このネタ順では不利になってしまったのかもしれない。

絶対に何言い出すかわからないネタをやるおぎやはぎの後に、こんなストレートなボケやりづらいよな。

アメリカザリガニはストレートなボケツッコミでも、それを平井と柳原の温度差で持ち上げながらテンポよく進んでいくのが魅力だと思うので、M-1の出場順というのはつくづく大きなと思う。

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