週刊少年ジャンプ

『ヒロアカ』は対話による救済を描き続ける。『あかね噺』は落語による復讐から落語界への証明へ。-週刊少年ジャンプ2023年33号(7/17)について-

2023年7月21日

表紙は55周年の集合絵。

55年ってすごいな。

数々の名作が生まれ続けている少年漫画業界だけれども、「少年〇〇アルティメットスターズ!」みたいな名前で主人公が勢揃いした時に、一番華があるのはやはりジャンプだ。

サンデーやマガジンでも好きな作品はもちろんあるのだけれども、このジャンプという土俵でどういった作品が出てくるのかを楽しんでいる節もあるので、新連載はどれにも期待してしまう。

看板作品が軒並み最終章の時代だけれども、『NARUTO』や『BLEACH』が終わる時だった同じようなことが言われていたのを思うと、やっぱりジャンプには期待をしてしまう。

もう二十代後半になってしまったけれど、私はまだまだジャンプを読み続けたい。

僕のヒーローアカデミア

お茶子…!!!!

デクを連れ戻す流れや、かっちゃんの謝罪、轟家のけじめ、そして今回のトガとのやり取り…
最終章にかけて描かれるバトルはどれも"対話"が描かれ続けていて震える。

本作のいいところは暴力に対抗するヒーロー達が、更なる暴力による抑制ではなく、投げかける言葉や対話によって救済を与えている事をしっかり描き続けている所だと今回改めて思った。

この救済の描き方は、冒頭でデクがオールマイトに救われるシーンからずっと徹底している。
デクはオールマイトに力を与えられることなんかよりも、オールマイトに「君はヒーローになれる」という言葉を貰えたことこそが救済だった。

今回はデクにとってのオールマイトの言葉のように、トガによってのお茶子の言葉は何よりも眩しく優しいんだろうなと思う。

そして今回は断言的な言葉を投げかけることで肯定する救済ではなく、お茶子らしく対話をトガから引き出して受け止めた。

本当にお茶子にしかできない救済だったし、お茶子に吐露できたトガも本当に眩しい。

ONE PIECE

英雄たちの強さは生まれ持ったものではないというまた怪しいセリフの登場。

覇気の力ってこんだけ強いんだったら能力者なんていらないじゃんか!って思っていたけれども、そんな修行次第でどうにかなるような問題じゃなさそう。

ガープとクザンが相打ちのような形で終わったようだけれども、シマシマの実の力にここからどうやって抵抗するのだろうか。

ベガパンク編は多くの謎が明かされたけれども、割と説明会のような役割も強かったので、今のパートに入ってからはビックネームたちの強さがどんどん具体的に描かれるようになってきて最近はずっと楽しい。

呪術廻戦

体術と蒼を使った肉弾戦で宿儺を追い込む五条の銭湯が無茶苦茶かっこいい。

今まで一撃必殺や瞬殺の嵐だったので、こんなにガシガシぶつかり合うバトルが見れるのが嬉しい。

そして毎度素人のはずの日車の観察力が冴えすぎている。
乙骨と日車だけが領域展開のわずかな先手に気付く。

ほんのわずかの先手でも無料空所が宿儺にヒット!
宿儺はスタン状態だろうがここで登場する魔虚羅…

ズルすぎる…

多分万戦の時のように影の中に潜ませていた魔虚羅と宿儺本体がスワップする形で登場していると思うので、「式神使いは本体を叩け」という戦法も封じられていそうだ。

五条は「なぜ十種影法術での攻撃をしてこない?」となっていたけれど、実際は今まで舵輪を影に潜ませて適応を同時進行していたため、宿儺は十種影法術を使って攻撃こそしなかったものの、"既に使い続けていた"ということになりそうだ。

無下限術式による攻撃を数回喰らっていたため、適応もすでに済んでいる。

ここから魔虚羅を倒すには、五条の新技を披露するしかなさそうだが、鼻血を出しているという不穏さもある…

1ヶ月の準備期間に仕込んだ新技の披露という期待もあるが、乙骨が予感する無茶フラグの通り、五条が限界を迎えそうでもある…

このバトルどう終わるんだ…
次回の休載…頑張って耐えます…

NARUTO外伝

螺旋丸誕生秘話。

『NARUTO』をあまりしっかり読んでこなかったせいで、『サム8』のイメージがすっかり強くなってしまったけれども、どこか他のタイミングでちゃんと読み返したいと思う。

確かサスケ奪還編くらいまでしか読んでいなくて、それ以降は飛び飛びで読んでしまっている。

SAKAMOTO DAYS

オーダーは殺し屋育成施設を持っているようだ。
そこ出身のクマノミはよくある殺人マシーン的な存在か。

強敵だったけれども豹の決死の動きで右腕を持っていった…

でも電磁石を使うキャラの隻腕化って、無茶苦茶強い義手をつけて再登場しそうな気しかしないな。

ここで豹が退場してしまうの寂しいな。
過去編で天性の殺しの天才たちのバトルを見せられた後に、凡人として頑張ってきた豹を見せられてすごく惹かれていたばっかりなのに…

アオのハコ

雛ちゃん、いい子やね……

そして幸せな同居生活が始まっている…

新たな障害が二人を阻む展開が来るかと思ったけれども、結構穏やかに進んでいる。

このまま順風満帆に結婚して完結するのもあり得そうで笑う。

あかね噺

すごく良い回だった。

今まで憧れてきて、「父の落語を認めさせる」という動機で走り出したあかねだが、彼女は落語の道に踏み込めば踏み込むほど父の"弱さ"の側面も理解していく。

唯一無二で真っ直ぐな、明らかな"強さ"を持った落語家に圧倒していたあかねだったけれども、高座の上で気付いたのは父の弱さだけではなく、落語は弱さをも芸にする懐があるということだった。

もちろん落語家には簡単には真似できない達人芸としてのエンタメとしての要素もあるけれども、人間を描き、誰もが持ち得る業を肯定する事も大切な腕なのかもしれない。

ここでの審査はもしかしたらひかるが勝つ展開になるかもしれないが、吸収力の良さでレベルアップしてきたあかねは、ここから自分の仁を掴んでいくと思うとワクワクする。

一生が語った「未熟な芸」は、完璧な演芸を求める一生にとっては"弱い"ものだったのかもしれない。
だからこそ、あかねの目指す道はここで「父の落語を認めさせる」という一生への復讐心だけではなく、「"弱さ"も魅力的な武器である」という落語という演芸への証明へと立ち向かうことになるのだろう。

良い漫画だな…

アイスヘッドギル

サナは弓使いだった!

そして敵は盲目のブーメラン使い。

地味ながらも王道を展開する冒険ものである本作だけれども、登場する武器が軒並みマイナーでちょっとワクワクする。

剣や刀などではない武器で独特なバトルが見られるようになってきたら結構楽しいかもしれないと期待している。

今でもすでに「回転数によって遠心力を上乗せした斧攻撃」という主人公のバトルはパッさえしないが、しっかり斧らしい技を使っていて嬉しい。

ウィッチウォッチ

ニコについてはまっすぐ良い子に育ったけれども、他の魔女たちは結構しんどい思いをして育った人も少なくないようだ。

ベタだけど、正体不明の敵の攻撃を探りながら展開されるバトル、大好きです。

そしてミハルのピンチに駆けつける中等部の二人!
フランはともかくジキルは戦えるんだろうか?ミハルのエナジータンク要因か?!

キルアオ

おしゃぶりを加える理由、「なんでって言われると難しい」とか言ってんのにめちゃくちゃ明らかな原因を自覚しているの面白いな。
それじゃん。

戦闘狂キャラとの対決が思ったより続くみたいだ。

おしゃぶりとは追いかけっこで対決したし、今回はスポーツでの対決。
もしかするとこの先、料理対決とか勉強対決とか色んな方面で張り合うのかしら。

それはそれで少し面白そうな気もするけれど、なおさら主人公が元殺し屋である意味がないか。

というよりも今のストーリーも全然主人公の元殺し屋要素が生きてないからあまり関係ないか。

アスミカケル

土居さん、『バキ』でいうところ、花山薫の舎弟の千春みたいな感じになっていくのかな。

しっかり先手で土居さんを瞬殺して、兄との対決。

テンポが良くて技を決めるところはしっかり見せてくる。

まだキャラが少ないのでどうなっていくのかわからないが、今後の主人公の動機に大きく関わってくるであろう次回の対決が楽しみだ。

鵺の陰陽師

海辺での幻妖退治ではなく、水着少女たちにエッチマンいじりされる回で丸々1話使ってる。

やっぱりバトルを片手間にやり過ごしながらギャルゲーを進めていくスタンスのようだ。

キャラ人気でどこまで寿命を伸ばせるのかがキモになりそうな漫画だが、『大東京鬼嫁伝』のようなことにはならないことを祈る。

逃げ上手の若君

ラスボスであるはずの尊氏を、恐ろしくも気持ち悪くもダサくもカッコ良くも描いてくるのが楽しい。

計略ものとしての面白さってとっつきにくさもあるけれど、本作はこういった「17歳と20歳による東日本全域の覇権争い」とわかりやすい比喩とかを頻繁に挟んでくるので、その人物たちの異様さがスッと飲み込めて楽しみやすい。

僕とロボコ

告知ものを書くときのバランス感覚がすごいという話をよくしていたけれども、今回は案件ゴリ押しというスタンスでボケてきた。

器用すぎる。

ブラッククローバー

アスタ、やっと来た。

ここから魔法帝をぶん殴って、最後に魔法帝が放った隕石魔法をアスタが街ごと運んで回避して、アスタがパティシエになって最終回かな。

暗号学園のいろは

三すくみのしっぽ取りゲーム。

ここまでは卓上で行われる謎解きゲームがメインで行われてきたけれども、ここからは計略もの的な面白さで攻めてきそうだ。

漫画らしいトンデモフィジカルキャラもいるので、どんな派手な展開を見せてくれるのかとても楽しみ。

今回の東洲斎さんのケツワードは「まだまだケツが青いわ」でした。

夜桜さんちの大作戦

最近は毎回本当に茶番9割:本編1割で描き続けているのが本当にすごい。

これ今189話目だけれども、ぎゅっとしたら多分本編は全部で60話分くらいで、残りの100話近くは多分単行本のおまけページでやる内容なのだと勝手に思っている。

アンデッドアンラック

"武"を説かれるゴロツキ側が圧勝するパターンってあるんだ。
しかも武もしっかり吸収してるし。

このループでのファンの悲劇とは「いつか老いて自分をも超える挑戦者と相見える」という願望が永遠に果たされないということだったようだ。
それによってファンは強者としての永遠の孤独に閉じ込められていた。

「他者を信頼し託していく」という輪に弾かれたファンの孤独は、「師匠として認め、弟子(息子)として認められようとする」というシェンによって救われる。
無茶苦茶いい展開だ…

ここで不真実を発動することで、ファンのズル賢勝利と同時に彼が抱く家族愛も描かれているのがアツい。

一ノ瀬家の大罪

集団自殺を仕掛けていたのは薬を盛ったお母さんのようだ。

しかしそこで家族を助けに戻ってきてくれたのは颯太。

事故で颯太だけが亡くなって、他のみんなは入院…翼は昏睡…

と思いきや、颯太、無茶苦茶生きてた。

毎回引きが強すぎる。
坂元裕二脚本のドラマじゃんか。

しかし引きの割には物語全体があまり進まないのは相変わらず…
やっぱりこの引き方って12話くらいで完結するドラマだからちょうど良いんだな…

描き方のディティールはすごく好きだけれど、他の読者は退屈してアンケートはいらないのも少し理解できてしまうので、打ち切られずに描き切れることを本当に祈っています。

人造人間100

100号の発火能力はてっきり無茶苦茶強いかと思っていたが、焼け爛れて付け直したパーツからは発火できないようだ。

このまま身を焦がして戦えば戦うほど発火できる場所が減っていくと思うと、そう簡単に連発できるようではなさそう。

そして兄妹の牢縛眼によって派手に敵を倒してくれた。
バトルシーンの地味さが気になっていたけれど、今回はカッコ良く締めてくれてテンションが上がった。

自己犠牲精神を否定してきたが、他人の為に命を張って戦場まで足を運んでくれた絢子さん。
もしかするとここで絢子さんは退場して、あしびの自己犠牲精神に揺さぶりをかけていく展開になるのだろうか。

ドリトライ

相変わらず作画のブレがすごい。

主人公が手に入れた技は、タフさを利用したカウンター…みたいな感じだろうか。

敵もカウンタータイプというのが明かされた回で主人公の技もカウンターだったので正直そこまでテンションが上がらなかった。

けれどもここからは技ありきでの対決になるので、どうなるのか期待。
敵キャラの虹村が全然魅力的に感じられないので、次の回とかで主人公に負けたらそれ以降登場しなさそうだな…とは思う。

テンマクキネマ

撮影場所の小道具が絵にリアリティを出すよ、というお勉強回。

少し前の回で倉木さんはもう新市のことをちょっと好きになっちゃってるの?!と引いてしまったけれども、今回の描写であくまで「友達ができて嬉しい」だったっぽいことがわかった。

ここまで撮影に向けて学生たちで頑張ってどうにかする展開が結構面白かったが、ここでまた肝心の「渚」ってどんな話やねん、という疑問が邪魔し始めた気がする。

登校シーンや部屋でのシーンの撮影を進めているけれども、「渚」の全体像を全く知らされていないので、撮影が進んでいる感覚や達成感のようなものがあまり読者は認識しづらいせいかもしれない。

前回の天幕と新市の関係性の描写はすごく良かったけれども、ここのモヤモヤはずっと根深く残りそうだ。

まとめ

今回は『ヒロアカ』がなんと言ってもすごすぎた。

和製アメコミみたいな印象でスタートした本作だったかもしれないが、今ではしっかりこの作品としてのヒーロー像を時代性とともに描き続けているんだなと実感した。

ヒーローというキャッチーな題材を書きながらも、"救済"ってそんな簡単な話じゃないということもここまでしっかり描いてくれる。

すごい漫画だ。

そして『呪術廻戦』もずっと最高のバトル漫画を繰り広げ続けている。

インフレし続けてもおかしくない能力漫画の世界で、あらかじめ設定されたルールの強度がすごくしっかりしている。
新技や新要素がどんどん足されていくのではなく、構築術式や天与呪縛、簡易領域などの要素をあらかじめ出しておいて、それの活用方法で後半は幅を利かせてくるのが本当にワクワクさせられる。

呪術の来週休載という小さい文字を見るたびに絶望するが、来週も頑張って耐え抜こうと思います。

少年ジャンプ+ 人気漫画が読める雑誌アプリ

少年ジャンプ+ 人気漫画が読める雑誌アプリ

SHUEISHA Inc.無料posted withアプリーチ

-週刊少年ジャンプ
-