漫才

[M-1グランプリ2001]ハリガネロック -ネタ書き起こし/審査/振り返り-

2023年2月9日

M-1グランプリ2001

10組目

ハリガネロック

ネタ

ユウキ
「僕ら色んなお客さんの前でネタやるんですけどね」

大上
「色々やらせてもらいますけどもね」

ユウキ
「一番やりにくいのが80以上のおばあちゃん」

大上
「これは困りますね」

ユウキ
「僕が一生懸命喋っても、ポ〜…」(口を開けてポカン)

大上
「動かへんの」

ユウキ
「死んでんのかと思って」

大上
「んなことない」

ユウキ
「おばあちゃんに聞いてみたんですよ」
「おばあちゃん誰がみたいの?って」
「ほんならおばあちゃん」

二人
「う〜ん…」

ユウキ
「美空ひばり」

二人
「無理やわそれ!」

ユウキ
「漫才師やんか」

大上
「どないもできへんやん、そんなのね」

ユウキ
「でもおばあちゃんの年代ってね、いまだに美空ひばりのファンが一番多いんですよ」

大上
「国民的スターですからね」

ユウキ
「写真の前でまだ泣いてんねん」

大上
「ファンの人はね、これ」

ユウキ
「『ひばり、ひばり、ひばり!不死鳥!』とかいうてからホンマに」

大上
「そうするとみんな『お嬢!お嬢!』って泣いてんのこれ」

ユウキ
「通称で呼ぶんですよ」
「『お嬢!お嬢!お嬢にもう一度会いたい!』」
「もうすぐ会えるわ」

大上
「こら!」
「そんなんいうてるから最近の若いやつはあかん言われんねん」

ユウキ
「確かにそうなんですよ」
「今日クリスマスでしょ?街中にカップルがうじゃうじゃおって邪魔でしゃあないんですよ」

大上
「またね、そいつらの手の繋ぎ方が全然違いますから」

ユウキ
「全然違う!最近ね、こうやって手を繋がない」

-ユウキと大上が横並びで普通に手を繋ぐ

大上
「全然こうやって繋がない」

-二人が社交ダンスのように肩に手を回しながら手を繋ぐ

大上
「この手こうやって」

二人
「てくてくてく」
「フォークダンスやないっちゅうねん」

大上
「体育祭ちゃうねんから」

ユウキ
「引いてまうわこんなもん」
「ほんでまた映画とかいくんですよ」

大上
「まあ行きますよね」

ユウキ
「行かんでええねんあんなもん」

大上
「いや楽しいもん」

ユウキ
「映画みてね、影響されるやつが嫌なんですよ」

大上
「あ、おるね」

ユウキ
「やくざ映画見た帰りね、肩で風切って歩いたり…」(肩で風きって歩く真似をする)
「誰かにしばかれたらええねんあんなん」

大上
「ボクシング映画見た帰りはね、シャドーボクシングしながら帰るの」

ユウキ
「そんで『千と千尋』見た帰りはこないして帰る」
(前屈みで手をあちこちに伸ばす)

大上
「釜爺に影響されへんぞ!」
「釜爺のマネして帰るやつはおらへんわ!何してんねん!」

-大上がユウキを引っ張って立ち位置に戻す

大上
「釜爺に影響受けへんやろお前」

ユウキ
「塩爺?」

大上
「釜爺や!塩爺が実写でボーンと出てこんわ」

ユウキ
「あんなんあかんよ!鬼太郎とかの方が面白かったやん!」

大上
「よかった?鬼太郎」

ユウキ
「よかったよ!『鬼太郎!鬼太郎!』」(目玉の親父の声真似)
「『なんだよ大竹』」

大上
「シティボーイズかい!」
「"ゲゲゲ"かと思うわ!」

ユウキ
「最高!って思ったやん」

大上
「アニメちゃうやんか」

ユウキ
「こっちのがええねん」

大上
「ええことあらへんよ」

ユウキ
「おかしいでしょなんか」

大上
「でもゲームセンターとかもカップルいっぱいおるよ」

ユウキ
「ゲームセンターカップルおるんですよ!あれ嫌でしょ後ろから見てくるでしょ」

大上
「今ね、ギャラリーが多いんですよねこれ」

ユウキ
「前ね、ゾンビ撃つやつをやってたんですよ」

大上
「『ハウス・オブ・ザ・デッド』」

ユウキ
「後ろでブサイクなのが『きゃ〜怖い!怖い!』お前が怖いっちゅうねん!」

大上
「ええやんか!」

ユウキ
「周りから見たら俺らカップルみたいに見えとんねん」

大上
「しゃあない見られるんは」

ユウキ
「でも指示してくんねん」
「『右!ちゃうちゃう左やった!右右!ちゃう左!』(後ろのギャラリー)」
「もう、うるっさいなぁ」(文句を言いながら銃のコントローラーを撃つ)
(後ろの人に銃口を向けて)「パン!」

大上
「撃つな!」
「死なへんわゾンビちゃうねんから」

ユウキ
「死んだらええねん!」

大上
「死んだらあかん!そんなもん」

ユウキ
「またね、不良が座ってみてんねん」

大上
「大体うんこ座りして見とんねんなこれ」

ユウキ
「タバコ吸いながらね、こうやって」

-ユウキ、椅子に座るような姿勢でタバコを吸う真似

大上
「なんで洋式やねん!」
「うんこ座り、こう!」(うんこ座りをする)
「洋式でもだんだん下がってくんねん!」

ユウキ
「座らへんのが根性やんけ!」

大上
「そんなんに根性いらんがな」

ユウキ
「ほんでまたね、海とか行くでしょ」
「寒いねんからちゃっちゃと家帰って寝とったらええねん」

大上
「ロマンチックでええねん」

ユウキ
「海に絶対おんのがね、男がこう、ロングコート着とんねん」
「ほんで女が『寒いわ』とか言って、そんで後ろからふわっ」(後ろから抱きしめる真似)

大上
「包みよんねんな」

ユウキ
「パッパラパーやで」

大上
「アホやこんなもんな」
「そのあと大体あったかいもの食べに行こうってなって」

ユウキ
「ラーメン食べにいくんですよこうやって」
(二人羽織のように食べづらそうに)「もうちょい下!もうちょい下!」

大上
「なんで二人羽織やねん!」
「包み込んで店入って、このまま食うたらあかんやん」

ユウキ
(大上を宥めるように)「仕事やってるから…」

大上
「俺も仕事中やわ!」
「一番大きな仕事やこれ!」

ユウキ
「ほんま?」

大上
「『ホンマ?』やあれへんやん」

ユウキ
「大体仲良いのは6ヶ月ぐらい。あとは浮気とかバレたりするんですよ」

大上
「そうですよ、僕も昔の彼女にやられてね」
「彼女の手帳パッとみたら"今日タカシと会った、ハート"」
「ハートマークや!」

ユウキ
「それは浮気してへんよ!そんなん!」

大上
「浮気やろ!ハートマークやねんから!」

ユウキ
「"今日タカシと会った、源氏パイ"」

大上
「どういうことやねん!」
「確かにこんな形で源氏パイ、ハートマークに似てるけどもやな」

ユウキ
「"なんかパサパサする、水気ゼロ"とかって、ここに薄ーい皮つけとんねいっぱい」(口元を指して)

大上
「どんな女やそれ」
「お前そんなんばっかいうてるけどな、この頃僕らもええとしなってるから結婚も考えなあかんよ」

ユウキ
「考えてんの?」

大上
「僕はね、年下の子と結婚すると決めてますこれは」

ユウキ
「なんも考えてへんやんけ!」
「結婚するんやったらね、年上の姉さん女房の方が絶対いいんですよ!」

大上
「年下の方が絶対可愛らしいですもん!」

ユウキ
「可愛らしいったって、どんどん可愛く無くなってくねんから!長期的展望で考えていけお前」

大上
「株みたいにいうなよ結婚を」

ユウキ
「姉さんの方がね、絶対気がきくんですよ!そっちのがいいですよホンマに」

大上
「年下の方がいいですよ!」
「僕が帰ってきてね、『帰ったぞ〜!』いうたら『お勤めご苦労様、体の調子はどう?』って、可愛いやん」

ユウキ
「姉さんやったら『今帰ったぞ〜!』いうたら『お勤めご苦労様!(低い声)』」

大上
「それやくざの姐さんやろ!」

ユウキ
「『シャバの空気はどう?』」

大上
「ずっとシャバおってん」
「お風呂入ってもそうですよ。背中流しながらね」
「『今日ね編み物教室に行ってきたの。今度セーターでも編んであげるわね』こんなん言われたら"編んで〜!"って絶叫やん!」

ユウキ
「姐さんなんか『今日彫り物教室に行ったんよ(低い声)』」

大上
「それ刺青やから!」

ユウキ
「『登り竜、彫ってあげるからね』」

大上
「いらんっちゅうねん」

ユウキ
「こんなん言われたら"彫って〜!!!"」

大上
「もうええわ!やめさせてもらうわ」

ユウキ
「センキュー!」

審査

各地の一般審査

札幌85点
大阪85点
福岡72点
合計242点

会場審査員

西川きよし95点
青島 幸男90点
春風亭小朝70点
ラサール石井92点
鴻上 尚史85点
松本 人志60点
島田 紳助75点

総得点

809点

振り返り

最後の組で、会場を沸かせていたアメリカザリガニを抜いて見事に二位になった。

現在は既に解散してしまったコンビだが、DonDoKoDonでなんとも言えなくなった会場を再び沸かして高得点を叩き出した。

ジャンルで言えば「ぼやき漫才」と言われるような、大衆に向けての愚痴のようなものを昇華させたネタだ。

ユウキがぼやき、大上がそれを諌めるような形ではなく、案外大上もそのぼやきに乗っかって、ここぞという時には二人で被せてセリフを言う。
こういうのはオーソドックスだが、やっぱりコンビの息があっているパフォーマンスを見るとテンションが上がる。

おばあちゃんに「もうすぐ美空ひばりに会える」と言ったり、ゲームを覗くブサイクを銃で撃ったり、やくざイジリをしたり、VTRで"武闘派"と呼ばれるのも少しわかるような、挑発的なボケが多い。

地方の得点が高く出たのも、ユウキのぼやきに対して大上が観客と繋ぐような立ち位置を取ったり、ユウキと一緒に観客に訴えるような立ち位置に移ったりと共感しやすいように立ち回ってくれているおかげな気もする。

ボケの流れとしては「カップルあるある」から飛躍させていく流れでおおよそのボケがまとまっている。
しかし後ろから抱きしめる流れから、そのままラーメンを食べるくだりは笑ってしまった。

最後は奥さんへの願望を姐御変換で畳み掛け締めていった。

麒麟の"アテレコ漫才"のような代名詞的な仕掛けはないが、テンポもよく少し痛快な小気味よさのある漫才だったので、既に解散してしまったのが残念だ。

そして、ここで10組のネタが全て終了した。

一位に中川家。
二位にハリガネロック。

互いに二本目のネタを披露してM-1グランプリ2001年は優勝が決まる。

初代の緊張感に当てられていたが、このまま中川家がどう走り抜けるのか。
そしてハリガネロックがどう太刀打ちしていたのかとても楽しみだ。

-漫才
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