漫才

[M-1グランプリ2001] DonDokoDon-ネタ書き起こし/審査/振り返り-

2023年1月28日

M-1グランプリ2001

9組目

DonDokoDon

ネタ

-登場してすぐ山口がパントマイムを始める

平畠
「何してんの」

-山口、ミキサーをいじるPAのような動き

平畠
「きっちりなおして」

山口
「全員の出囃子、オレがやってましたからね」

平畠
「嘘やん、知らんかったわ」

山口
「あれ!いつからおったん!」

平畠
「ちょい待て!ひとりぼっちにすなお前。楽屋でもひとりぼっちやってんから」

山口
「びっくりするわもう〜」

平畠
「何がやねん」

山口
「一人でリップ塗ってる時『どういうことやねん!』思って」

平畠
「いや本番前やからしっかりしとかな思って」

山口
「今日も何ですか」
「また歩道と車道の間を這ってきたんですか?」

平畠
「はあ?」

山口
「歩道と車道のこの段のところを、こう、這ってきたんですかって言うてんねん」

平畠
「いや普通に歩いてきたよ」

山口
「いや、わかる?この歩道と車道のね?自転車で乗ろうと思ったらズズーってなるところあるやんか」

平畠
「それはわかる、それはわかるよ」

山口
「そこを這ってきたんですかって聞いてんねん」

平畠
「だから普通に歩いてきたって言ってんねん」

山口
「(平畠の口周りを指して)砂鉄がいっぱいついてんねん」

平畠
「これ髭じゃ!あほ!」

山口
「(両手を上げて大袈裟に)ええ〜?!」

平畠
「何してんねんお前」
「なんでドッキリなってんねん」

山口
「髭ですか」

平畠
「髭でございますよ」

山口
「髪の毛はそれはむしったんですか?」

平畠
「何でやねん、綺麗に切ってきとるわい」

山口
「散髪じゃなくて?」

平畠
「散髪ですよちゃんと」

山口
「あっ、そうですか」
「すぐもう年末ですから、はっきり言ってその辺でえらいもんがありますよ」
「子供は子供で迷子なるし、デパートでも多いやんか」

平畠
「何が」

山口
「みんななんかお土産買ったろうとか、おじいちゃんおばあちゃんが子供にクリスマスのプレゼント買ったろとか言って、迷子だらけですよ」

平畠
「ああそう」

山口
「デパートぷらっと行ったら迷子のアナウンスかかってますよ。ちょっと癖ありますね」
「ポンポンポンポ〜ン(アナウンス音)」
「(独特な抑揚で)本日は、えご覧いただきましてぇ〜、え誠にありがとうございます」
「えお客様にぃ、え迷子のお知らせを申し上げます。3歳から58歳くらいの〜」

平畠
「58歳?!」
「58歳迷ってる場合ちゃうぞそんなもん」

山口
「どのくらい?」

平畠
「いや5歳くらいでしょ」

山口
「3歳から5歳くらいのぉ、赤のトレーナーに白のスカートをはいた緑の女の子が〜」

平畠
「どういう子やお前、何の女の子やねん」

山口
「いろんな子がいてるんですよ」

平畠
「おらんよ緑は流石に」

山口
「あとね、必ずテレビを見ていたら警察もの必ずやるじゃないですか」

平畠
「年末年始ね」

山口
「あれはもうすごいですね、僕大好きなんですよ」
「犯人を捕まえる瞬間とかを警察官追ったりとか、ドキュメントですから、見てる方もワクワクするんです」

平畠
「そらそうや」

山口
「でもあれ見てたら東京と大阪でかなり違いがありますね」

平畠
「なるほど、差がある」

山口
「それちょっとやってみましょうか」
「(ナレーション)ここ東京新宿は歌舞伎町」
「(自分の顔に手でモザイクをかけながら)何とってんだよやめろ馬鹿野郎!テレビお前!」

平畠
「何してはるんですか?」

山口
「モザイクをちゃんとかけてる」

平畠
「ああモザイクか」

山口
「(モザイク)見せもんじゃねえんだバカヤロー!」
「(ナレーション)場所は変わってここ、大阪道頓堀」
「(股間にモザイク)何とっとんねんアホ!いってまうぞコラぼけ!」

平畠
「何の犯罪やねんそれ」

山口
「警察も来ますよ」
「(股間にモザイク)やめとけやめとけコラ!」

平畠
「何で穿いてへんの?警察官まで?」

山口
「野次馬も来ます」
「(股間にモザイク)なんかあった!なんかあった!」

平畠
「みんなやん」

山口
「カメラさんも!」
「(股間にモザイクをしながらカメラを担いで)すごいスクープだ、ワッハッハ!」

平畠
「アホや」

山口
「そうですよ、それが大阪のすごいところですね」

平畠
「いや大阪そんなことないっすよ」

山口
「そんなん多いじゃないですかマジで」
「僕らも今東京住んでますけど、大阪帰ろう思って移動中ですよ」
「新幹線乗ってたらマナーの悪い人多いですね」

平畠
「多いですね」

山口
「携帯電話ですよ。着信メロディ切っておきなさいよと言うのにバーっとなるじゃないですか」

平畠
「散々言うてますよ」

山口
「(着信音)ティ〜ティリリリ♪ティリリリリ〜♪」

平畠
「着信音が?」

山口
「おっちゃん『男はつらいよ』入れてるんですよ」
「ティ〜リリ♪『はいはい、もしもし』って、『男はつらいよ』入れてんのに普通にとってるんですよ」

平畠
「電話やからな?」

山口
「それやったら普通に『ピリリリリ』で良いじゃないですか」

平畠
「どないせいっちゅうの」

山口
「『男はつらいよ』を入れてるなら…」
「ティ〜リリリ♪ティリリリリ♪」

平畠
「何してんの、はよでえや」

山口
「パパパ〜パ♪パパパパパ〜♪」
「(電話を取る)はい、私(寅さんの真似)」
「って言えば周りも『あ〜そうそう!寅さんの真似!』って思うじゃないですか」

平畠
「物真似せなあかんの?」

山口
「それが演出ですよ」
「それが『宇宙戦艦ヤマト』を入れてるならね」
「テーテッテテーテレテッテッテテー♪」

平畠
「早よとってな、鳴ってんで」

山口
「テ〜テテテ〜テ〜テ〜テテテ〜テ♪」

平畠
「何をしてんねんお前、ええから取れよ」

山口
「パラパッパラパ♪」

平畠
「うるさいおっさんやなぁ」

山口
「パラパッパ〜〜〜〜!」
「(電話に出る)ぴっ!さらば〜♪」
「これやったら『ヤマトだからかー!』ってなるじゃないですか」

平畠
「かけた瞬間『さらば』っておかしいがなお前」

山口
「新幹線乗ってても誰も知ってるこの人!とか言ってくれないんですよ」

平畠
「そらダメですね」

山口
「ダメでしょ?僕らもっとテレビ出ないと!」
「たとえば僕が思うのは『徹子の部屋』ってあるじゃないですか」

平畠
「あるね」

山口
「これは出たらスターの証ですから」

平畠
「出たいね!」

山口
「僕、徹子さん役で出ますんで」

平畠
「出るの?」

山口
「徹子さんのところをやりたいんですよね」

平畠
「徹子さんいてますけどね」

山口
「そのうちね、やりたいんですよ。その時はトップの座をあげますよ!」

平畠
「ゲストで?」

山口
「ゲストでちゃんと呼びますから、練習しておかないと」

平畠
「最初だけやな」

山口
「行きますよ」
「(徹子の部屋のテーマ)トゥ〜ルル♪トゥルルル♪」

-山口、平畠にお茶を出すような仕草
-平畠、お辞儀をする

山口
「トゥ〜ル〜ル〜ル〜♪」(カメラに向かって手を振る)

平畠
「いや終わりかい!」
「もうええわ」

審査

各地の一般審査

札幌47点
大阪18点
福岡29点
合計94点

会場審査員

西川きよし75点
青島 幸男85点
春風亭小朝65点
ラサール石井82点
鴻上 尚史84点
松本 人志65点
島田 紳助64点

総得点

614点

振り返り

後半はもはやゾッとするような空気の漫才だった。

恥ずかしながら私はぐっさんがコンビを組んでいたことを全く知らなかった。

最初見た時「漫才やるためにピン同士臨時で組んだのかな」と思ってしまったくらいだ。

だがネタを見ても臨時で組んだのかと疑うような空気だった。

ぐっさんは、イメージ通りのぐっさんのオモシロをやっているのだが、平畠が相槌を打つ友人のようになっていて怖くなった。
完全に"たまたま横にいる人"じゃないか。

なんだかネタが面白い面白くないとか、ツッコミが上手い下手とか、漫才の構成がどうとかいうことはもはや全く気にならない。
本当にコンビなのか…?という不安が第一にきてしまう。

ぐっさんは得意の形態模写や喋りの上手さをガンガン出していく、「知っているぐっさん」だ。

けれどもどうだろう。
たとえば電話をとって寅さんの声真似をするくだり、ここなどツッコミが入ってもおかしくなさそうなタイミングだが、ツッコミは入らずにぐっさんが自分でまいたボケを即座に自分で回収する。
かといってその後に続く平畠のセリフは「物真似せなあかんのかいな」という、"ツッコミ"ではなく"相槌"だ。

ずっとある違和感の正体は、ずっとツッコミがないということなのかもしれない。

ツッコミのような言い回しの台詞ではあるが、何というか、体感としてはツッコミというより「指摘」の範疇というのだろうか。

ツッコミが悪いような書き方になってしまったが、これはボケがツッコミを信用してないが故の台本のような気もしてしまう。

お笑いをやろうというモチベにあからさまに差があるような気がしてきて、少し悲しくなってしまった。

調べてみたらどうやら二人の不仲説は有名らしく、実質解散状態で何年も経っているようだ。

お笑いのするパワー、漫才をするパワー、トークのパワー、キャラクターのパワー…全部違うパラメーターなんだな。
お笑い芸人として活躍する人はやはりただものではない。すげー。

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