漫才

[M-1グランプリ2001]ますだおかだ -ネタ書き起こし/審査/振り返り-

2023年1月17日

M-1グランプリ2001

8組目

ますだおかだ

ネタ

増田
「松竹芸能のますだおかだです。不利不利!」

岡田
「いらんこと言わんでええねん」

増田
「まあ年末どこ行ってもなんか鬱陶しいよね」

岡田
「まあまあ人が多いからね。今」

増田
「そうそう。飯食いに行っても忘年会とかうるさいやんか」

岡田
「一気飲みとかやかましい」
「(手拍子をしながら)パーリラ!パリラ!パーリラ!」
「やかましいほんまあれは!」

-増田、きょとんとした顔で岡田の再現を眺める

増田
「まあやかましいですよね」

岡田
「ですよね」

増田
「最近若い奴らの犯罪とか怖いでしょ?」

岡田
「青少年犯罪いうやつや」

増田
「ある事件からね、青少年犯罪おかしなったんですよ」

岡田
「なんやある事件て」

増田
「"ナイキ狩り"からね」

岡田
「ああ、あったね」

増田
「(不良を演じて)おい、ナイキの靴くれや」

岡田
「あとね、親父狩りとかも」

増田
「(不良を演じて)おい、親父くれや」

岡田
「違うわ」

増田
「(不良を演じて)せこいのうお前は!」

岡田
「いらんいらんいらん!」

増田
「最近あるのがね、デリバリー狩り」

岡田
「知ってます?何や寿司とかピザの配達のやつが狙われるの」

増田
「そういう犯罪がこれからどんどん増えるやろね」

岡田
「たとえばどんなの?」

増田
「いちご狩り」

岡田
「遠足やないか」

増田
「(不良を演じて)お前ちょっとついてこいや」

岡田
「一緒に行くんか遠足」

増田
「(不良を演じて)ミルクかけてくれや」(器を差し出すような仕草)

岡田
「仲ええがな、ちょっと」
「いちご狩りて、あかんあかん」

増田
「あとさみしがりとか」

岡田
「何やさみしがり」

増田
「(不良を演じて)家おってくれや」

岡田
「寂しいだけやがな」

増田
「(不良を演じて)寝るまで本読んでくれや」

岡田
「いくつやねん」

増田
「(不良を演じて)豆電球つけといてくれや」

岡田
「寝られへんのかい!暗かったら寝られへんタイプや!」

増田
「(不良を演じて)ヴィックスヴェポラッブ塗ってくれや」

岡田
「風邪引いてんのかい!」

増田
「(不良を演じて)スースーしたいや」

岡田
「知らんがなそんなもん!」
「何やねんそのさみしがり言うの」

増田
「あと寒がりとか」

岡田
「もう勝手にやって」

増田
「(不良を演じて)暖房つけてくれや」

岡田
「寒いだけやろ?」

増田
「(不良を演じて)岡田どっかいけや」

岡田
「誰が寒いじゃコラ!失礼なこと言うなほんなもん!」
「わしゃツンドラ気候か」

-増田、真顔で岡田を眺める

増田
「いらんことを言うなお前」

岡田
(少しあたふたしながら)「ネタを膨らましとんねんこれで、パーっと」

増田
「客は萎んどんねん」

岡田
「言わんでええねん俺のことは!ほっとけあほ!」

増田
「最近はね、ほんまそういう犯罪がどんどん増えるやろうね」

岡田
「まあね、なんか最近の若い奴らはちょっとしたら自殺とかしたら怖いよ」

増田
「え、なに、自殺考えてんの?」

岡田
「考えてない考えてない!」

増田
「お前自殺したらあかんで。芸能界パニックやでほんなもん」

岡田
「なるか!パニックなんか」

増田
「ワイドショーのレポーターとかもいっぱい来よるよ」

岡田
「来るか!」

増田
「来るよ!」
「(レポーター演じて)私は今…」

岡田
「あら来たよ」

増田
「(レポ役)岡田圭右さんの葬儀が営まれております、アルタ前に来ております」

岡田
「いやどこでしとんねん!」

増田
「(レポ役)岡田圭右さん、本名平原徹男」

岡田
「いやそれカルーセル麻紀さんの本名」
「俺は本名通りや」

増田
「(レポ役)葬儀が行われております」
「(レポ役)参列者の皆様も続々と来られております」

-岡田、照れくさそうにペコペコする

増田
「(レポ役)美空ひばりさんの3万人、X JAPANのHIDEさんの5万人をはるかに凌ぐ、3人」

岡田
「少ない!」

増田
「(レポ役)まだ両親も来られておりません」

岡田
「え?!はよこい!ヒデオ、スズコ、はよ来い!」

増田
「(レポ役)岡田のお母さん、岡田スズコさん。旧姓を鈴木スズコと申します」

岡田
「言わんでええそれも!」

増田
「(レポ役)スズキやのにスズコっていうんです」

岡田
「本人も気にしてんねん!言うな!」

増田
「(レポ役)そのリンリンもまだ来ておりません」

岡田
「リンリンて!良い歳くったおばはんやぞ」

増田
「(レポ役)しかし悲しいことにファンによるお遠い自殺があとを断ちません」

岡田
「する奴おるか、そんなもん」

増田
「(レポ役)岡田さんのファン、いわゆるオカラーのみなさんは…」

岡田
「オカラーて豆腐のカスみたい!オカラーって嫌やな」

増田
「(レポ役)岡田さんと同じ死に方をしようと、マンションの4階から7階への飛び上がり自殺」

岡田
「どんな死に方?!」
「(体を伸ばして)4階ビューン!結局落ちてるやんそれ!」

増田
「(レポ役)彼は一体何を考えていたのでしょうか?」

岡田
「俺が聞きたい」

増田
「(レポ役)最後の最後まで、空回りでした」

岡田
「誰が空回りやこら!言わんでええねん!」

増田
「(レポ役)そして岡田圭右さんが出演されていたCMにつきましては打ち切りが決定しております」

岡田
「CM出てへんのよ」

増田
「(レポ役)えーまずはTBC…」

岡田
「出てないよそんなオシャレな」

増田
「(レポ役)TBC…高井戸バッティングセンター」

岡田
「何やねんその略し方!」

増田
「(レポ役)そしてUCC…」

岡田
「だから出てへんて」

増田
「宇都宮キャッチングセンター」

岡田
「わけわからん!」
「取っちゃ投げ、取っちゃ投げ!商売繁盛せえへんどこれ!」

増田
「(レポ役)えーそして本日は『知ってるつもり⁈』の方でも岡田圭右さんの生涯を放送する予定でございます」

岡田
「これはちょっと嬉しい!」

増田
「(レポ役)緊急特番としてまして放送時間を変更しまして、夜の9時から、9時7分まで」

岡田
「短い!人生ペラペラ俺」

増田
「(レポ役)なお、ナイター中継が伸びた場合は中止させていただきます」

岡田
「ちょい待ておいコラ!」

増田
「(レポ役)おっと今!岡田さんのご遺体を載せた自転車が出てきました!」

岡田
「自転車やないわ!棺桶ぐらぐらなってるやん!車!霊柩車や!」
「ほんでお別れのクラクションが『ファー』!」

増田
「(自転車に乗って)チリンチリン!」

岡田
「しょぼいわ!」
「もうええわ」

審査

各地の一般審査

札幌75点
大阪52点
福岡68点
合計195点

会場審査員

西川きよし95点
青島 幸男80点
春風亭小朝80点
ラサール石井88点
鴻上 尚史84点
松本 人志70点
島田 紳助78点

総得点

770点

振り返り

ますだおかだは、スタジオ内の審査員得点は一番高かったものの、地域の一般審査員の得点が降らず、現状三位となってしまった。

現在ではすっかりおふざけキャラとして定着している、ますだおかだの岡田だが、当時としてはツッコミなのにこのへなちょこ感があるのは新鮮だっただろう。

しっかりスムーズにツッコミをやっているだけなのに、何となく滲み出る岡田の雰囲気なのか「最後の最後まで空回り」という台詞に何となく説得力を感じて思わず笑ってしまう。

この後ますだおかだは岡田の"スベり芸"を大きな武器として活躍してくことになるが、この時点でも増田の岡田に対する辛辣な扱いで笑いをとっていた。

しかし「スベり漫才」ではなく、岡田が"スベり芸"も持っていると言うのがカッコいい。
岡田のスベりはあくまでトッピング。主要のボケとツッコミでしっかりと会場を沸かせている漫才だ。

〇〇狩りの言葉遊びから、岡田の寒さ、そしてそんな岡田の報われないお葬式というコント入り。
話題は数回変わっているものの、その繋ぎ方もスムーズでそつなくこなしている。

淡々とボケる増田に対して、賑やかに岡田が(空回り感を演出しつつも)気持ちよくつっこむ。
この緩急のある強い漫才だからこそ、「飛び上がり自殺」「キャッチングセンター」といったキラーワードで爆発が生まれるのだろう。

今やスベり芸のおもちゃとして認識されかねない岡田だが、ますだおかだの漫才は岡田のキャラの新しさとオーソドックスな形式美のあるカッコいい漫才だ。

-漫才
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