漫才

[M-1グランプリ2001]ハリガネロック(最終決戦) -ネタ書き起こし/審査/振り返り-

2023年2月21日

M-1グランプリ2001

最終決戦

ハリガネロック

ネタ

ユウキ
「まあM-1出るって決まったらね、学生時代の先生から『頑張れよ』って」

大上
「嬉しいがな」

ユウキ
「言われんでも頑張るわ!生活かかっとんねんこっちはそんなもん!」

大上
「いらんこと言わんえええねん!ありがとうでいいやん」

ユウキ
「学校の先生嫌いやってん、俺」

大上
「なんでやねん」

ユウキ
「僕らの頃の学校の先生ってね、無茶苦茶やったんですよ」
「すぐ持ってるもんでどつきよるんですわ」

大上
「まあいてましたわこれ」

ユウキ
「国語の先生やったら辞書でガーン!」

大上
「数学の先生やったらでっかい定規でガツン!」

ユウキ
「理科の先生やったらビーカーでパリーン!」

大上
「危ないがな!」
「血がだらだら出るがな」

ユウキ
「そこに硫酸をドバー!」

大上
「溶けてまう!」
「おらんようになってまうがな」

ユウキ
「行方不明の生徒ばっかりやったんですよ」

大上
「消えるまでかけたらあかんがな」

ユウキ
「ほんで服装チェックが厳しかったんや」

大上
「ありましたよ、朝の早よに校門の前で生活指導の怖い先生がね上スーツ下ジャージで竹刀持ってね」

ユウキ
「そんで僕らのとこガーって来て『松口、服装が乱れてる!』って」

二人
「お前や!」
「上スーツで下ジャージやん!」

大上
「バラバラやないか」

ユウキ
「お前が門から出られへんっちゅうねんな」

大上
「ほんまに帰られへんって話やでこれ」

ユウキ
「あとね、頭髪検査!これもきびかったんよほんまに」

大上
「今のこ髪の毛長いから大変でしょうねコレ」

ユウキ
「今の子ね、でも個性がないねホンマに」
「好きなタレントの髪型ばっかりやん」

大上
「確かにね、キムタクファンやったら髪の毛この辺(肩のあたりを指す)まで伸ばしてね」
「あゆのファンやったら色染めたりしてね」

ユウキ
「アルフィーのファンとかすごいで!」
「眼鏡かけて髭つけて長髪やからね!」

大上
「全部やんなよ!一人に絞っていかな!」
「高見沢やったら高見沢、坂崎は坂崎、桜井は桜井いうて」

ユウキ
「…茶化すな」

大上
「茶化してへんがな!」
「ビシッといったがな今」

ユウキ
「僕ね、一番嫌いな先生が英語の先生やったんですよ!カッコつけてるでしょ?」

大上
「そう?」

ユウキ
「そうやん」
「キーンコーンカーン鳴って教室入って『グッドモーニングエブリワン』…はあ?」

大上
「はあ?やないがな」

ユウキ
「こんにちは」

大上
「いや英語で返したって」
「英語で挨拶せんかい」

ユウキ
「日本でやってんねん!日本人相手にやってんのに日本語喋ったらええがな!」

大上
「英語の授業やん、みんな早いこと英語に馴染んでもらうんで挨拶も全部英語やねん」

ユウキ
「ほんなら古文の先生がガラガラー入ってきて『お早うごじゃりまする』って言うか?」

大上
「言わんけどそれは」

ユウキ
「数学の先生がガラガラー入ってきて『0 8 4』」

大上
「"084(おはよう)"って言うか!」
「ポケベルやないねんから」

ユウキ
「数字に馴染んでいこうとしてんねやんけ」

大上
「わかりにくくなってるからそんなもん」

ユウキ
「また音楽の授業もね、知らん歌歌わすから歌えへんねん」

大上
「ほな言うけどもね、童謡かてええ歌やであれ」

ユウキ
「いや童謡は悪影響の歌ですから絶対歌わないでくださいね!」

大上
「そんなことないよ」

ユウキ
「『犬のおまわりさん』なんか酷いですよ」

大上
「あれはいい歌ですよ?可愛らしい歌や」

ユウキ
「知ってんの?」

大上
「当たり前や」
「迷子の迷子の子猫ちゃん♪」

ユウキ
「そうそうそう!」

大上
「あなたのお家はどこですか♪」

ユウキ
「そうそうそう!」

大上
「お家を聞いてもわからない♪」

ユウキ
「そうそうそう!」

大上
「名前を聞いてもわからない♪」

ユウキ
「そうそうそう!」

大上
「うるさい!『そうそう』って入ってこんでええねん」

ユウキ
「合うてるから」

大上
「知ってんねん」
「にゃんにゃんにゃにゃん♪ 泣いてばかりの子猫ちゃん♪」
「犬のお巡りさん 困ってしまって わんわんわわん♪」

ユウキ
「これ現実として考えてくださいよ!」
「俺がお巡りさんな、お前が迷子や」

-大上が迷子を演じて泣いている素振り

ユウキ
「坊やどうしたの」

大上
「えーん、迷子になっちゃったよ」

ユウキ
「お家どこ?」

大上
「わかんない」

ユウキ
「名前は?」

大上
「わかんない」
「(目を覆い)ウワ〜ン!」

ユウキ
(渋い顔で腕を組む)
「(目を覆い)ウワ〜ン!」

大上
「おかしいけど!」

ユウキ
「誰が解決すんねんこんなもん!」

大上
「おまわりさん泣いてもうて終わりやけどな」

ユウキ
「懲戒免職やこんなもん!」

大上
「そない言わんでええわ」

ユウキ
「税金泥棒もええところやで!」

大上
「もうええやん」
「メルヘンんの世界やからええねんて!」

ユウキ
「『森のクマさん』も酷いですよ」

大上
「あれは楽しい歌です」

ユウキ
「知ってんの?」

大上
「当たり前や」
「ある日森の中♪」

ユウキ
「そうそうそう!」

大上
「クマさんに出会った♪」

ユウキ
「そうそうそう!」

大上
「花咲く~♪」

ユウキ
(歌詞の"森の道"に合わせ)「そう!そう!そう!そう!」

大上
「うるさいねんて!」
「花咲く森の道♪ クマさんに出会った♪」
「楽しい歌やんけ」

ユウキ
「このあとやんけ」
「クマさんの言うことにゃ♪」
「お嬢さん お逃げなさい♪」
「食うてまえや!そんなもん!食物連鎖がうまくいかへんやないか!」

大上
「そんなん気にせんでええねん!」

ユウキ
「根性なしのクマや」

大上
「優しいくまやがな」

ユウキ
「そんでお嬢さんは帰るんですよ」
「すたこらさっさっさのさ♪」
「おっさんやないねんからお前!」
「すたこらさっさて!」(ガニ股でカニ歩き)

大上
「そんな逃げ方はしてないやろ!」

ユウキ
「結局クマがついてくんねん」
「クマは"トコトコトッコトッコ♪"って可愛らしい感じやねん!逆にせな!」

大上
「ええがな音は!」

ユウキ
「あと童話!これも話したらダメですよ」

大上
「なんで?感動する話いっぱいあるがな」

ユウキ
「ある?」

大上
「当たり前や、『笠地蔵』ええ話やで」

ユウキ
「ほんま?」

大上
「寒い日に傘が売れへんから帰り道にお地蔵さんに『寒いやろ』言うて一個一個こうやって…」

ユウキ
「そんな話ちゃうわ!」

大上
「優しいお爺さんの話やんけ」

ユウキ
「いかれたジジイの話やあれは」

大上
「どんなんやねん」

ユウキ
「商品売れへんからって勝手に手付けて、石に向かって『寒いやろ』て」

大上
「お地蔵さんや」

ユウキ
「寒いからってなんで傘やねん!地蔵も思ってるわ『服くれ、服』」

大上
「言わへんわそんなもん!」

ユウキ
「『ダウンジャケットを…』言うて」

大上
「もうええわ」

審査

会場審査員

西川きよしハリガネロック
青島 幸男中川家
春風亭小朝中川家
ラサール石井中川家
鴻上 尚史中川家
松本 人志中川家
島田 紳助中川家

振り返り

最終投票は大きく差がついて中川家が優勝した。

ハリガネロックのネタは普遍的ではあるが、誰もが一度は思ったことがある心の中のツッコミを痛快に発散するというパターンが1本目と2本目に通してあった。

対して中川家は、よくある遅刻の話に、予想外のディティールであるあるが介入するという構成だった。
ネタの要素になっているものはどれも共感性が高いものなのに、それらの構成の仕方でこちらの予想を裏切って笑いを産んでいる。

ハリガネロックも共感性は高いけれど、予想外の切り口という点でこうして並んだときに差が出たのかもしれない。

しかし、ベタな童話や童謡をネタにしながらも、「森のクマさん」での「足音が逆の方がいいのではないか」といういじり方は妙に説得力もあって笑ってしまった。

漫才は提示される極論があたかも正論のように変化していく時に笑いが起きたりする。
なぜこれが面白いのか不思議だ。「そんなわけない」と「確かに言いたいことはわかる」が入り混じった人間味に笑いを誘われるのだろうか。

2001年のM-1グランプリはやはり中川家の経験値と、その射程範囲の広さに改めて唸らせられる回だったと言えるだろう。

次のM-1グランプリ2002も引き続き見ていこうと思う。

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