漫才

[M-1グランプリ2002]ハリガネロック -ネタ書き起こし/審査/振り返り-

2023年2月28日

前回の記事で、無事にM-1グランプリ2001年を見届けることが出来た。

伝説ともなっている、トップバッターから不動で駆け抜け優勝をする中川家は、やはりカッコよかった。むちゃくちゃ笑った。

今回からは2002年の大会を見ていこうと思う。

2002年のM-1グランプリの出場数は、前大会をはるかに上回る1756組の出場となっている。

そして、敗者復活枠というのもこの年から導入され、合わせて9組で対決することになる。

審査員席に立川談志がいて個人的にはテンションが上がる。

2002年の審査員は、立川談志、中田カウス、島田洋七、サラール石井、大竹まこと、松本人志、島田紳助の7名。

早速1組目からネタを見ていきたいと思う。

M-1グランプリ2002

1組目

ハリガネロック

ネタ

ユウキ
「ほんとまあ7年目の勝負ですよ」

大上
「頑張っていきましょう」

ユウキ
「今日電車で来たんやけどね、迷惑なやつ多いんや」

大上
「まあいうたら大体そういうのはカップルが多いんですよ」

ユウキ
「カップル?」

大上
「そう、いうたら女の子をドア側に立たせて、男が手をついて守りよんねん」(壁ドンのような仕草)
「あれなんやねん!」

ユウキ
「それはええがな別にそんなん」

大上
「何お前、やったことあるんちゃうの」

ユウキ
「あるよ」

大上
「カッコ悪いよそれ」

ユウキ
「これはね、男気なもんですよ」
「僕は両手ですよ!パン!パン!『大丈夫?』」(両手で壁ドンするような仕草)

大上
「おるわ〜…」

ユウキ
「そんとき扉開いたんや」
(前傾になって両手を大きく開く)

大上
「カッコ悪いわ!」
「駅気づかへんのカッコ悪いそれ!」

ユウキ
(腕を指して)「ビンビンやここ」

大上
「手離したら済む話やないか」

ユウキ
「駅行ったらおるんがね、駅で佇んでるカップル」

大上
「これがまたホームの隅っこの方でね、別に何も喋らへんのよこれが」

ユウキ
「何にもせえへんねん!」

大上
「何にもせえへんねんけどね…」

-二人静かに身を寄せたって抱き合うように頬をつける

二人
「なんかせえよ」

大上
「じーっと固まったまんまや」

ユウキ
「実家やホテル代ないなら金貸したろかと思うねほんまに」

大上
「ほっといたらええねんそんなんは」

ユウキ
「大体こういうカップルってね大概ブサイクなカップルなんですよ!」

大上
「まあまあ、まあね」

ユウキ
「ブサイクアンドブサイク、足してもブサイク」
「DNAが受け継がれていくねんな」

大上
「どうしようもないね」

ユウキ
「他のカップルと何が違うかといいますとね、喋っている会話がおかしいねん」

大上
「会話?」

ユウキ
「甘くとろけるような会話喋ってんねん」

大上
「ちょっとイチャついたこと言いよんねんな」

ユウキ
「男が女にね、『今日可愛いね』『今日だけ?えへへ』」
「何をいうとんねん」

大上
「ええがなそれくらい」

ユウキ
「俺見てたから『今日も明日も明後日もブサイクじゃー!!!』って」

大上
「ほっといたってもう、言わんでええのそんなん」

ユウキ
「今日可愛いわけあらへんがな」

大上
「黙っといたったらええやんか」

ユウキ
「大体ね、こんなの女の方が言わしたりすんねんな」

大上
「確かにね」

ユウキ
「最近は女性が強くなってきてるんです」

大上
「いうたらコンパなんかでも女性が中心ですからね」

ユウキ
「ほんでそのあとカラオケとかいくんですよ」
「最近絶対歌われるのが、平井堅の"大きな古時計"」

大上
「歌いますね〜」

ユウキ
「あんなん盛り上がんのか?ジジイ死んでる話やんあんなん」

大上
「いやいい歌なんですよあれ!」
「でもあの歌聴いたらね、僕はちょっとドキッとすることがある」

ユウキ
「ドキッとするの?」

大上
「♪大きなのっぽの〜って、俺のこと言うてんのかなって焦ってまうねん」

ユウキ
「確かにね」
「♪もう、動かない〜」(大上に手を添えて)

大上
「やかましいわ!」
「ポンコツの歌になっとるやないかお前」

ユウキ
「みんな歌ってたでお前」
「♪大きなのっぽの邦博くん ♪ロックさんの奴隷〜」

大上
「違うわ!嫌な歌歌うなお前」

ユウキ
「♪7年休まずに、頑張りますから〜!!!(大上の腕に縋り付く)ネタ覚えますから〜!!!見捨てんといてください!!!」

大上
「言うか!カッコ悪いわ俺!」
「よだれダラダラ垂らしながら(ユウキの腕に縋りついて)『見捨てんといてください!!ネタ覚えますから!!!すみません!!』」

ユウキ
「ちょ、ちょっと…普段のお前見せんなって」(大上を宥めるように)

大上
「誰がやんねん!やるかこんなこと!」

ユウキ
「(客を指して)引ききってるやないか」

大上
「やらんわこんなこと」

ユウキ
「こいつ普段おかしいんですよ」
「多分こいつオカマなんですよ」

大上
「人聞きの悪いこと言わんといてよ」

ユウキ
「普段持ってる鞄がトートバッグでね、そんなかに財布入れてんねん。オカマやでそんなもん」

大上
「そんなことないがな」

ユウキ
「男やったら『1200円なります』言うたら後ろのポケットからパパッと出すもんやんか」
「それを『(裏声でクネクネしながら)ああっあ〜、いや〜』(財布をカバンから出そうとする)」

大上
「どこいくねん!払ってへんやないかちゃんと」
「なんで俺財布出しておまじないみたいなかけなあかんねん!」
「払てるわパパッと!」

ユウキ
「おかしいがな!」

大上
「何がやねん」

ユウキ
「ラーメン食う時もそうですよ」
「レンゲにラーメン入れてラーメン食いよる」

大上
「上品ですよねこれ」

ユウキ
「男やったら汁飛ぼうが何飛ぼうがガガガって食べるもんですよ!」
「それをこうやって『(裏声でクネクネしながら)あ〜ふ〜ふ〜、いやぁ〜!』」

大上
「食べれてないやん!」
「なんで麺持ち上げておまじないかけてん!」
「ズルズルズルズル食べます!そんなもん!」
「男らしいねん!見てくれ!」

ユウキ
「(クネクネしながら)男らしいねん〜」

大上
「やってない!ダブルピースもやってない!」

ユウキ
「普段もナヨっとしてるからおかしいねんほんまに」
「人に対して怒らないんですよ」

大上
「それは原立つことがないから怒らないだけで、腹立ったらバシっと言いますよ!」

ユウキ
「男やったら一つくらいあるやろお前!なんか考えてみいやお前」

大上
「え〜…最近でいうたらな!」

ユウキ
「最近?」

大上
「えー…こたつ!」

ユウキ
「こたつ…?!」
「人間ちゃうの?!」

大上
「こたつに足突っ込んだらな、赤外線のところに足ガッてあたんねん!」
「痛って思って腹立つねんけどな、こたつやから何も言われへん」

ユウキ
「じゃあこたつにキレたったらええねん!男やったらお前!」

大上
「どないすんねん!」

ユウキ
「布団の部分を上で包んでやな」
「(こたつに向かって)『おうおう、恥ずかしいやろお前〜、赤外線丸見えやぞ〜』」

大上
「女子高生のいじめやないか」
「やめさせてもらうわ」

審査

会場審査員

立川 談志70点
中田 カウス85点
島田 洋七86点
ラサール石井81点
大竹 まこと83点
松本 人志64点
島田 紳助75点

総得点

545点

振り返り

今年から地方の一般審査はなくなり審査員の特典のみで集計されるようになった。
無茶苦茶正しい判断だ。一般審査は点数の振り方が極端で、知名度や人気票にも近い要素が強かった。

前年の大会では準優勝となったハリガネロックが今年はトップバッターとなった。
こうして立て続けに見ると、前年よりもグレードアップしている感じが明らかにわかってテンションが上がる。

カップルあるあるから、大上の女々しさやユウキの男らしさ論が誇張されていくボケへと移り変わっていく。
オカマいじりや男らしさといった話には、今見るとどうしても時代を感じてしまうが、今となってはどうしようもない話だ。

構成としては、ユウキの世の中への批判から大上へのいじりへ転嫁していく流れだ。
大上に「そんなことしてないわ」と縋り付く再現をしたところで「普段のお前を見せるな」とハシゴを外すところは、大上の迫真さも重なって無茶苦茶笑ってしまった。

その後の大上が「こたつに腹立つ」というくだりでは、大上自身の持つおかしさが一瞬表面化される面白さがある。
基本はユウキの世間に対する切り口で笑いをとっていくハリガネロックだが、このネタでは大上によって笑わされてしまう仕掛けも何個かあるのが特徴的だ。

そして最後の"女々しいこと"を批判するよくある流れから、こたつくらいにしか腹が立たない大上に対するアンサーが、「コタツを辱める」だとは予想外のアプローチで笑ってしまった。

スタイルは変えずに、二人でシンクロさせる流れもありつつも、世間への煽りからコンビ間のやり取りへ変化していくという進化もあって感動した。

もしこのネタを2001年の2本目で出していたら、あそこまで中川家と差が開いての投票差とはならなかったのではないだろうか。

すでに解散してしまっているコンビなだけにもうネタが見られないのが少し寂しいが、リベンジに来たというアツさがしっかりあって嬉しくなるネタだった。

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