漫才

[M-1グランプリ2001]アメリカザリガニ -ネタ書き起こし/審査/振り返り

2022年12月20日

M-1グランプリ2001

4組目

アメリカザリガニ

ネタ

柳原
「頑張っていきましょう!」

平井
「あ〜うるさい」

柳原
「お前が言うな」

平井
「今日なんかね皆さんデートなんか行かはって」

柳原
「こない言うてもクリスマス世の中しているよ」

平井
「デートいうたらドライブみたいなね」

柳原
「乗ってんねやろな」

平井
「ドライブしてたらですね、ちょっと小腹が空いてくる」

柳原
「言うても運転疲れるからな」

平井
「今なんかね、ドライブスルーっていうのがあるんですよ」

柳原
「あれ便利やね。みんな知ってるでしょ」
「車でウィーンと入っていって、窓ウィーン開ける。ほんならメニューがあってその下にマイクがあってね『すいません』言うて」

平井
「(店員役で)いらっしゃいませ」

柳原
「そうそう、中と繋がってるわけね」

平井
「こちらでお召し上がりですか?」

柳原
「持って帰るわそんなもん!」
「スルー!スルー!」

平井
「スルーする?」

柳原
「スルーしにきたの!ここで食べてたら渋滞起こるし」
「(お辞儀をしながら)『すみませ〜ん』って」

平井
「ドライブスルー?」

柳原
「スルー!」

平井
「する?」

柳原
「無茶苦茶する!」
「注文注文!」

平井
「(店員役で)あ、注文。少々お待ちください」

柳原
「早よして、時間ないから」

平井
「重ねた恋は幾知れず」

柳原
「おかしいおかしい」

平井
「いつの間にやらスーパー勤め」

柳原
「なになに?」

平井
「男の数だけ腹が減る」

柳原
「腹減ったよ」

平井
「だから車でドライブイン」

柳原
「したよ」

平井
「それでは注文していただきましょう。柳原哲也で、お時間少々かかります〜」
(深くお辞儀する)

柳原
「スッと言えや!」
「そんなんしてるから時間かかるんやろ。こんな前置きいらんのよ」

平井
「(演歌の前奏風に)ナンナナン♪ナナナ♪ナンナナンナナン♪」
「ズンベラ♪ズンベラ♪ズンベラ♪ズンベラ♪」
「ズベララベッパ♪」

柳原
「あ、そう言うことね」

平井
「ズ〜ラララ〜♪タラタタッタタ〜♪」
(手を柳原に添えて番を譲る)

柳原
「(前奏にノって演歌風に)チーズバーガー♪ひとつください〜♪」

平井
「お客様」

柳原
「はいはい」

平井
「普通に注文してください」

柳原
「お前がさしたんやろ!」

平井
「演歌はTPOに合わせて」

柳原
「TPOやあらへんがな」
「そういうシステムかな思うがな」

平井
「店内話題騒然」

柳原
「流すな!」
「普通のチーズバーガーでええねん、そんなもん」

平井
「お客様すみません。もう少し大きな声でお願いします」

柳原
「チーズバーガー」

平井
「もっと」

柳原
「チーズバーガー!」

平井
「もっと!」

柳原
「(怒鳴るように)チーズバーガー!」

平井
「(嗜めるように)あ〜あ〜ダメだダメだ、お客さん」

柳原
「何やねん」

平井
「そんな声じゃ、厨房には届きませんよ」

柳原
「お前が言いにいけ!」

平井
「さぁ、大きな声で!」

柳原
「大きな声でて、なんでドライブスルーで『チーズバーガー!!!』言わなあかんねん」
「『(厨房役で)あ〜なんか言うてる』っておかしい!」
「なんのためのマイク?」

-平井、渋い顔のままゆっくり首を傾げる

柳原
「『さあ?』やないやろ」
「チーズバーガーでええ!そんなもん」

平井
「サイドメニューも色々ございますが」

柳原
「あ〜そんなんもあるね」

平井
「ポテトはいかがですか?」

柳原
「ほなそれも一つつけといて」

平井
「サイズの方はですね、順番にS、O、Sとございます」

柳原
「どこにおんねん!」

-平井、両手でVの時を作り谷間を指差す

柳原
「『山のこの辺』?わかるか!何山脈のどこやねん」
「普通のサイズがあるやろ、普通のサイズが」

平井
「普通のサイズが、寸、尺、里と」

柳原
「長い!」

平井
「デカい!」

柳原
「お前フライドポテトを"里"て、何キロ食うねん!」

-柳原、縦笛を吹くような仕草で長いポテトを食べる様子
-平井も真似して同じポーズをする

柳原
「(そのポーズで足踏みしながら)むしゃむしゃむしゃむしゃ…野を超え山越え」

-平井も同じポーズのまま足踏みを始める
-だんだん二人が向き合い始める

柳原
「むしゃむしゃ食べて行った先にはお前が!チュ、あほ!」

-二人、ポッキーゲームのような仕草
-チュ、で平井が両手を開いて「わお」と仕草

柳原
「何の出会いや!」
「求めてへんそんなもん!普通のSサイズつけといて」

平井
「(不服装に)はい、わかりました」

柳原
「それでええ、アホか」

平井
「ご一緒にお飲み物はいかがですか?」

柳原
「ああ、ほなシェイク!」

平井
「わかりました。テリヤキシェイク、ワンでございます」

柳原
「気持ち悪い!気持ち悪い!」
「何を冷たく冷やしてぐちゃぐちゃにしてんねん」
(シェイクを持った仕草)「食え!これ、食え!」

-平井、小さくブルブルと首を振る

柳原
「いらんやろ?そんなもん」

-平井、静かに頷く

柳原
「ふざけんなよさっきから!しばくぞコラお前は」

平井
「はい?」

柳原
「しばくぞコラァ!」

平井
「コーラですか?」

柳原
「あ、違う違う!」
「コラァ怒ってんねん」

-平井、柳原に隠すようにニヤニヤ笑う

柳原
「『ダジャレいうたこいつ』みたいなんやめてくれ」
「何やねん、コカコーラ、ペプシコーラ、しばくぞコーラ、いらんわ!」

平井
「フハハハ」

柳原
「ハハハちゃうわ!」
「会計!会計!」

平井
「あ、お会計の方ですね、合計500飛んで12円と」

柳原
「どこ飛ぶねん!」
「512円は飛ぶとこない!」
(両手で数字を並べる仕草)「トトトーン!」
「何で新しい位を付けたん?俺6000円て思うたやないか」

平井
「アホやな」

柳原
「『アホやな』ちゃうわ、おかしいおかしい」

平井
「あ〜すみません、間違ってました」
「500揉んで12円です」

柳原
「どこ揉むねん!」

平井
「どこでも」


「『どこでも』ちゃう!なんやその優しさはお前」
「俺が気ぃ揉むわアホ」

平井
「うまいですね」

柳原
「うまいですね』とか言わんでええ、さらっと流してくれたらええねん」
「ほら1万円!これでやって!」(紙幣を手渡す仕草)

平井
「1万円お預かりします」
「("蛍の光"のメロディ)タンタン♪タタン♪タンタン♪タタン♪」

柳原
「何いうてんの?」

平井
「("蛍の光のメロディ")タラタン♪タタンタンタン♪」

-二人、向かい合って両手でシャッターが閉まる仕草

二人
「ピシャ!」

柳原
「閉まった!おい!」
「何してくれてんねん!商品もお釣りももろうてへんやないか」
「その金どないすんねん!」

平井
(受け取った紙幣を眺めて)「思わぬ収穫」

柳原
「俺の金やないか!」
「もうええわ!」

審査

各地の一般審査

札幌84点
大阪57点
福岡87点
合計228点

会場審査員

西川きよし88点
青島 幸男85点
春風亭小朝80点
ラサール石井92点
鴻上 尚史84点
松本 人志65点
島田 紳助74点

総得点

796点

振り返り

アメリカザリガニと聞くと、20代後半の人はモンハンP2ndGでコラボしていた事を思い出す人もいるのではないだろうか。
双剣『アメザリクロウ』とか。無茶苦茶懐かしい。

そんなことはさておき、アメリカザリガニの特徴は何といっても柳原のその甲高い声だ。
ダウンタウンの浜ちゃんを彷彿とさせる抜けのいいツッコミがテンポよく飛び交う。

逆に平井の方は低めの声で、言葉数は少ないまま、ずっと落ち着いたトーンで振る舞う。
けれど、ちょこちょこジェスチャーなどで茶目っ気のある動きを取り入れてくるので、温度差があるのに噛み合っていて、何だか楽しそうに二人が漫才をしているような印象がある。

二人は役柄としては徹底して店員と客として話が進んでいく。
「シチュエーションの再現がおかしさを、振り回されながら正していく」という構成だ。

このネタを見て思うのは、演歌注文の「店内話題騒然」「流すな!」のくだりのコンパクトさ。
それに反して「サイズはS,O,S」「どこにおんねん!山のこの辺?わかるか!」というくだりの変なディティール。
この差が独特な気がする。

「店内話題騒然」「流すな!」のくだりは、演歌調に乗っかって歌唱注文してしまったのを店内に流されていたという流れなのだが、「なに店内まで勝手に流してんねん」というような形で説明ツッコミをしてしまいそうなところを「流すな!」でスパッと終わらす潔さ。
「どこおんねん!」のくだりこそ、そのツッコミで終わらせられそうなのに、平井がイタズラに説明する無言のジェスチャーを拾い、「わかるか!」と一蹴するくだりが続いていく。

この二つから見れるような要素がアメリカザリガニの漫才の持つシンプルなテンポの良さと、独特なノリ感を作っているのかもしれない。

「テリヤキシェイク」のキラーワード感はさることながら、柳原はシェイクを平井に押し付ける仕草で「これお前食えるか?」と詰め寄るシーンは思わず笑ってしまう。
平井もずっと飄々としていて、柳原をおちょくっているような雰囲気で進むのに、柳原のそういった詰めに対して不服ながら押されてしまうような関係性の転換もある。

平井はやり取りではなく、無言でのリアクションをする場面も多いが、それが言葉数の多い柳原の役割を邪魔せず、小憎たらしいような笑いを足すのだ。

久しぶりに柳原の声を聞くとモンハンがしたくなってしまった。
ザリガニグローブの双剣からまた『キリキリマイーッ!!』という声が聴きたい。

-漫才
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