漫才

[M-1グランプリ2001]キングコング -ネタ書き起こし/審査/振り返り-

2023年1月3日

M-1グランプリ2001

6組目

キングコング

ネタ

西野
「まあ言うても今日なんかクリスマスですよ」

梶原
「そうですよ」

西野
「やっぱこういう日に独り身っていうの寂しいね。彼女が欲しい」

梶原
「彼女作ったらええがな」

西野
「でもこんな仕事しよったらね、きっかけがあるようでないでしょ」

梶原
「簡単やきっかけなんて」

西野
「どうすんの」

梶原
「コンパ行ったらええねん」

西野
「コンパ?コンパなんか嫌やわ。鬱陶しいことが多いがな」

梶原
「俺ついていったるわ」

西野
「いやもっと鬱陶しいわ」
「なんで来んねん。足っぱるでしょ?」

梶原
「どういうことやねん」

西野
「大体あんた遅刻とかするでしょ?」

梶原
「まあその可能性は大やね」

西野
「女の子待たせるなんて考えられへんやろ」
「遅れたらちゃんと謝らなあかん」

梶原
「俺ちゃんと謝るがな」

西野
「時間に遅れてすみません」(深くお辞儀)

梶原
「髪型キモくてすみませーん!すみませんすみません!」

西野
「ええんです謝らんでええ、そんなこと」

梶原
「いうがな俺ちゃんと!」

西野
「言わへんでええねん」

梶原
「でもこれってあれですよね、コンパで遅れたらね、女の子って絶対言うんですよ」

西野
「なんていうの」

梶原
「(女役で)お〜そ〜い〜!!お〜そ〜い〜!!!」(体を震わせながら)

西野
「どんな女やこれ」

梶原
「時間にルーズな人むっちゃ嫌〜!!」

西野
「いや気持ち悪いな」

-西野のツッコミを梶原が避ける

西野
「避けるやつがあるか」
「嫌〜!!やないよ俺も嫌や」

梶原
「西野くん、友達紹介するわ」

西野
「お願いします」

梶原
「(肩を窄めていかつい声で)初めましてこんにちは〜!」

西野
「気持ち悪いわ」

-梶原、肩を窄めたまま西野のツッコミをしゃがんで避ける

西野
「また避けた!」

梶原
(しゃがんだまま)「こんにちは〜!」

西野
「戻ってこい!」(梶原を引っ張り立ち上がらせる)

梶原
「なぁ〜!」

西野
「『なぁ〜』やないねん、どんな女や!」

梶原
「こんな女や」

西野
「そんな不細工な女?」
「まあそんな女の子連れてな、コンパ会場にカラオケよっこらせ(陽気に跳ねて)って行くやんか」

梶原
「こうよっこらせ(陽気に跳ねて)って行くか?コンパ会場に?!」

西野
「普通にこうやって(手を上げて足踏み)カラオケ行くわ」

梶原
「普通にカラオケこれ(手を上げて足踏み)もおかしいがなお前」

西野
「笑うな!一生懸命やってんのによ!」
「普通に行ったらええやん!」

梶原
「まあええわ」

西野
「カラオケボックスにつくでしょ?」
「着いたらまずトイレに行くんですよ」

梶原
「なんでトイレに?」

西野
「身だしなみのチェックや!」

梶原
「ああ、鏡の前に立ってね」

西野
「ネクタイ」(ネクタイを締める仕草)

梶原
「締めて!」

西野
「ジャケット」(ジャケットを直す仕草)

梶原
「羽織って!」

西野
「髪型」(髪を直す仕草)

梶原
「キモくてすみませ〜ん!」

西野
「もうええ言うてんの」

梶原
「やらせえよ」

西野
「やらんでええねん」

梶原
「ほんじゃあトイレで身だしなみのチェックするわけな」

西野
「そうチェックするやろ、そんで出るわいな」
「みんなのところに戻ったら、まずせなあかんのが自己紹介」

梶原
「自己紹介ね」

西野
「これがまた緊張するがな」

梶原
「大丈夫やって!」

西野
「なんでや」

梶原
「俺がちゃんとついていってんだからフォローしたるやないか」

西野
「できるんですか?」

梶原
「おう、行け行け!」

西野
(センターマイクに向かって)「西野亮廣です」

梶原
(ガヤ入れのように)「かっこいい!」

西野
「21歳です」

梶原
「今が旬!」

西野
「血液型はO型、星座はカニ座」

梶原
(手で蟹の鋏を作りながら)「君の心を挟みたい!」

西野
「ダサい!」

梶原
「カニだけに!カニだけに!」

-西野、梶原を叩き止めさせる

梶原
「ここでひとしきり自己紹介盛り上がるでしょう」
「そのあともっと盛り上がるんですよ」

西野
「何するんですか?」

梶原
「ゲームするんですよ」

西野
「ゲームもしょうもないでしょう」

梶原
「しょうもないことないって」

西野
「何すんねんお前」

梶原
「あれ盛り上がるで。懐かしいですけどマジカルチェンジね」

西野
「マジカルチェンジってあれね」
「チェーンジ♪チェンジ♪マジカルチェンジ♪」(手拍子を始める)
「"おかん"という字を一文字変えて"みかん"♪」

梶原
「"みかん"という字をイントネーション変えて♪」
「み〜↓か〜↑ん〜↓!み〜↓か〜↑ん〜↓!♪」

西野
「イントネーション変えたらあかんやろ」
「なんや『み〜か〜ん〜』て」

梶原
「そんなん言うてへん」

西野
「言うたやないか」

梶原
「言うてへん」

西野
「言うたやないか」

梶原
「言うてへん」

西野
「言うたやないか」

梶原
(二人を割って入るように)「いやいやどちらでもいいじゃないですか!」

西野
「お前誰や」

梶原
「三人目誰やねん!」

西野
「俺のセリフや!」

梶原
「ごめんなさいね」
「でもゲームもこれで盛り上がるでしょ?」
「そのあともっと盛り上がりますよ?カラオケで歌、歌うんです」

西野
「カラオケもしょうもないがな」
「しょうもないやつがアニメの歌とか歌うやろ」

梶原
「歌いよるな」

西野
「あれ鬱陶しいで?」

梶原
「ちょっと僕思うんですけど、アニメの歌っておかしな歌多ないっすか?」

西野
「どれを言うてんの?」

梶原
「例えば『まんが日本昔ばなし』のエンディングです」
「あんなんもん100%セクハラ勧めてるでしょ」

西野
「セクハラを勧めてる?どこを言うてんの?」

梶原
「くまの子見ていたかくれんぼ〜♪お尻を出したこ一等賞♪」

二人
「どんなルールやねんお前!」

西野
「ふざけるな」

梶原
「ふざけるな」

西野
「どんなルールや」

梶原
「どんなルールや」

西野
「そんなかくれんぼ見たことあります?」

梶原
「そんなかくれんぼ見たことありますか?」

西野
「ちょっと待ておい」

二人
「人の言うことを真似するな」

西野
「俺のセリフや言うねん」

梶原
「ごめ〜ん!ミスった!」(体をくねらせて)

西野
「さっきも注意したでしょ」

梶原
(くねらせたまま)「ほんまですか」

西野
「もうやらんでええよ」

梶原
(くねらせたまま)「きいてくださいよ、僕思うんですけどねやっぱり歌っておかしな歌が多いと思うんです」
「他にもおかしな歌ありますよ」

西野
(くねらせた体を指して)「喋りにくない?」

梶原
「喋りにくい!ものすご喋りにくい!」

西野
「戻ったらええがな」

梶原
「戻して!」

西野
「戻してこい」

-西野、手をパンと叩く
-梶原、その音に合わせ背筋をピンと戻す

西野
「なんやそれ、これで戻るようになってんの?」

梶原
「これで戻るんですね〜」

西野
「面白いなこれ」

-西野、手をパン、パン、パパパンと叩く
-梶原、それに合わせ1,2,345と違うポーズをとる

西野
「あら楽しい」

梶原
「楽しいでしょう」
「僕音に反応して動くんですよ」

西野
「まあ言うたら体がフラワーロックみたいな」

梶原
「違います違います、人間ですから」

西野
「すみません変なこと言いましたね」

梶原
「でも他にもおかしい歌いうたらありますよ」

西野
「なんでしょう」

梶原
「(ガッチャマンの歌)誰だ♪誰だ♪誰だ〜♪」

西野
「ガッチャマンね!」(手拍子を始める)

梶原
「空の彼方に踊る影♪」(陽気に踊りながら)

西野
「これおかしいですか?」

梶原
「白い翼の♪ ガッチャマ〜ン♪」(体をくねらせて)
「動きがおかしい!」

西野
「お前がつけたんや!」
「もうええわ!」

審査

各地の一般審査

札幌64点
大阪55点
福岡60点
合計179点

会場審査員

西川きよし95点
青島 幸男75点
春風亭小朝70点
ラサール石井76点
鴻上 尚史83点
松本 人志55点
島田 紳助74点

総得点

707点

振り返り

今やよくわからないことになっているキングコング。

しかし当時21歳という若さでM-1の決勝まで上り詰めていることを思えば、当時の勢いはとんでもないものである。

私と同じ世代の人たちは『はねるのとびら』というバラエティ番組で散々彼らを見てきたのをよく覚えているだろう。

意外にも順番的にテンポよく手数の多さで攻めてくる漫才が久しく、キングコングのこの隙間なく畳み掛けていくスピード感が痛快だった。

フットボールアワーの記事の際に言及したように、最近の漫才はタイトルに沿った一本筋が通った話題でネタを進めて行きがちだが、このネタは「合コン行って彼女を作りたい」という軸ではあるものの、実際は梶原が縦横無尽にボケていくスタイルだ。

言葉選びやそのニュアンス、間などで面白さを出していくというよりは、梶原のアクセルを踏み切ったようなギャグや顔、声色、動きで笑いをとっていくのが潔いネタだ。

かといって、変な顔や変な声の一辺倒ではなく、後半では逆に西野の揚げ足を取る梶原であったり、梶原が西野のセリフを奪うなどといった台本遊びなどの飛び道具もしっかりあるのがニクいところだ。

それぞれのボケやツッコミに奇抜な目立ち方はないかもしれないが、老若男女の誰に対してもウケやすいネタ作りを西野は意識しているのかもしれない。
(のちの『プペル』とかを思うと尚更そういったエンタメ性を狙っていそう)

このまま芸人街道まっしぐらでいたらキングコングはどうなっていたのだろうか…
そんなifの世界も想像したくなってしまう懐かしさだ。

個人的には現在の二人の活動はワクワクさせられることがあまりなく、また二人でやっているネタが見たいなと思うばかりだ。

-漫才
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